研究課題/領域番号 |
21K08127
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
北川 知郎 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (70633709)
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研究分担者 |
檜垣 徹 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (80611334)
立神 史稔 広島大学, 病院(医), 講師 (90411355)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 心外膜下脂肪 / イメージング |
研究実績の概要 |
開胸心臓手術症例を対象とした術前画像解析と心外膜下脂肪組織(EAT)の採取および組織学的解析を進めている。令和3年度内では合計21症例において、基本情報のデータベース化、深層学習アルゴリズムを用いたCT再構成画像による冠動脈、弁膜、EAT解析、さらにEAT検体の免疫染色等を実施した。まだ症例数が少ないものの、これまでの解析から大動脈弁硬化症とEATにおける炎症性マクロファージ(type M1)浸潤や石灰化基質(オステオカルシン)発現との関連性を示す知見を得ている。 バイオトレーサーを用いたイメージング研究については、18F-フッ化ナトリウム(NaF)の冠動脈プラークにおける長期的な集積変化を解析した。3年以上の間隔で2回NaF PET検査を施行した症例では、ベースラインにおいて亢進している冠動脈プラークのNaF集積は2回目の撮像でも継続している傾向を認めた。さらに、冠動脈プラークのNaF集積を経時的に促進する因子として糖尿病が有意に作用している可能性を示し、論文として報告に至った(J Nucl Cardiol, 2022 in press)。我々は以前に、冠動脈プラークのNaF集積が近傍EATのCT値上昇(炎症亢進を示唆)と相関していることを報告しており(Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2020)、CTとPETを用いた新たな冠動脈イメージング評価法の構築に繋がる知見と考えられた。また、直接的にEAT解析を行った研究ではないが、心臓MRI T1 mappingを活用した心筋症評価に関するアウトカムを発表し(Int Hear J, 2022 in press)、EATがもたらす心筋症への影響を検証する際の基礎データになりうると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
非侵襲的治療の発展とともに開胸心臓手術件数が減少している社会的状況があり、当初の想定より術中検体採取症例数が少なかった。利用可能なバイオトレーサーによるイメージング研究は進みつつあるが、予定していた一部の新規バイオトレーサーはコロナ禍の影響もあって精製計画が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
症例登録およびEAT組織検体の採取については、可能な範囲で症例蓄積と解析を進める。特に、新知見が示唆されつつある弁膜石灰化、弁膜症とEATにおける炎症、石灰化基質との関連性についての検討を進める。開胸心臓手術症例は貴重であり、採取検体の一部は冷凍保存し、今後の新たな解析への活用を検討する。NaF PETイメージングについては、その長期予後に対する意義の検証を進める予定である。その他のバイオトレーサー精製方法については協力機関と検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の試薬、消耗品を使用することにより、組織検体処理に計上していた一部予算を使用することなく施行可能であった。予定していた情報交換のためのカンファレンスがコロナ禍の影響で中止となり、移動費、資料作成に計上していた予算に余りが出た。次年度においては、組織検体処理のための人件費に50万円、実験用の消耗品(抗体試薬、スライドガラス、ピペットなど)購入費および他施設での情報収集費用(移動費)として30万万、学会発表旅費に20万円使用予定である。
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