研究実績の概要 |
昨年度に続き、開胸心臓手術症例における画像解析および心外膜下脂肪組織(EAT)の採取と組織学解析を進め、最終年度はEATの臨床画像および免疫組織学的所見と大動脈弁疾患の原因となる大動脈弁変性との関連について一定の知見を得た。EATにおける炎症、石灰化基質の発現が大動脈弁石灰化の進展に密接に関わっていること、そのようなEATの分子生物学的変性の臨床的サロゲートとしてCT値を用いたイメージングマーカーが活用できる可能性を見出した。本研究結果の一部をAmerican Heart Association Scientific Session 2023にて発表し、追加データを加えた内容を第88回日本循環器学会学術集会にて発表した。これらの結果をまとめた論文を英文誌に投稿し、最近受理された(Circ J, 2024)。 研究期間全体では、活性化した石灰化を標的化する新規バイオトレーサー18F-フッ化ナトリウム(NaF)を用いた病態イメージングの成果を得た。冠動脈プラークにおけるNaF集積が3年以上の長期間持続する傾向があり、冠動脈プラークのNaF集積を経時的に促進する因子として糖尿病が有意に作用している可能性を示し、論文として報告に至った(J Nucl Cardiol, 2023)。さらに、18F-NaF PET撮像後5年間における主要冠動脈イベントをエンドポイントとして追跡調査を行ったところ、冠動脈プラークにおける18F-NaFの集積亢進はイベント予測の有用な指標となることを示し、論文発表した(J Nucl Cardiol, 2023)。また、本研究費の一部支援のもと、心筋虚血診断のための新規画像モダリティーとして、CTデータから流体構造連成解析を用いて仮想的に虚血を評価するシステム(CT-FFR)の信頼性、有用性を解析し、論文発表に至った(Heart Vessels, 2023)。
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