研究実績の概要 |
手根管症候群症例の摘出滑膜におけるアミロイド沈着率や性別および年齢ごとの陽性率、アミロイド陽性に関連する因子について検討を行った。アミロイド陽性率は37%であり、高齢、男性、腰部脊柱管狭窄症を有する症例、両側手根管症候群症例においては陽性率が高かった。また120名(平均70.4歳:男性57%)の手根管症候群手術時に摘出した滑膜にアミロイド沈着を認めた症例においては、心アミロイドーシスのスクリーニングの同意を得て、スクリーニング検査(心電図、心エコー、バイオマーカー:BNP、高感度トロポニン、Free light chain)を実施した。そのうち12名の症例については心アミロイドーシスを疑う所見を認めていたため、ピロリン酸心筋シンチグラフィという診断特異性の高い画像診断を実施したところ、6名において陽性所見を得ており、これらの症例については野生型トランスサイレチン型心アミロイドーシスと診断している。いずれの症例も心不全はなく、きわめて病初期の状態であった。これらの結果については欧州心臓病学会にて発表し、Circulation Journal誌にAcceptされた(Takashio S, Kato T, Tashima H, Irie H, Komohara Y, Oguni T, Morikawa K, Kuyama N, Tabata N, Hanatani S, Yamamoto E, Matsushita K, Ueda M, Tsujita K. Prevalence of Cardiac Amyloidosis in Patients Undergoing Carpal Tunnel Release With Amyloid Deposition. Circ J. 2023 Jul 25;87(8):1047-1055. doi: 10.1253/circj.CJ-23-0223. Epub 2023 Jun 13. PMID: 37316262)。 現在初回スクリーニングにおいて心アミロイドーシスの可能性が低いと判断した症例について、経年的な変化を評価するために、1年に一度のスクリーニング を実施。心アミロイドーシスの発症における経時的な推移を評価している。
|