研究課題/領域番号 |
21K08136
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
芦野 隆 昭和大学, 薬学部, 准教授 (00338534)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 活性イオウ分子 / サルフェンイオウ / 酸化ストレス / 血管平滑筋細胞 / PDGF / Akt |
研究実績の概要 |
血管平滑筋細胞(VSMC)は、活性酸素種(ROS)をセカンドメッセンジャーとして利用することで遊走の強度と方向性を調節し、血管傷害後の修復に寄与する。サルフェンイオウを含有する活性イオウ分子は、その高い求核性から強い抗酸化作用を有し、生体の恒常性維持に貢献していることが示唆されている。本研究課題の目的は、血小板由来増殖因子(PDGF)によるVSMC遊走における活性イオウ分子の役割を解明することである。 2021年度は、PDGF刺激によるVSMC内活性イオウ分子の増加およびPDGFによるVSMC内ROS産生とVSMC遊走の活性イオウ分子ドナーによる抑制を明らかにした。VSMCへのPDGF刺激は、PDGFR-βの自己リン酸化を惹起し、その後、細胞遊走に必要なシグナル伝達経路が活性化される。さらに、ROSもPDGFシグナル伝達経路と同様のシグナル伝達経路を活性化することが明らかになっている。そこで2022年度は、VSMCへのPDGF刺激による下流シグナル伝達因子の活性化における活性イオウ分子の影響を検討した。 PDGFによるPDGFR-βの自己リン酸化は 処置2 分後にピークに達し、60 分にかけて徐々に減弱した。また、PDGFR-βの下流に位置するAktリン酸化は、PDGF処置15分後にピークに達し、60分後まで持続した。このPDGFによるAktリン酸化における活性イオウ分子の効果を検討したところ、活性イオウ分子ドナー5aおよびNa2S4ともにPDGFによるAktリン酸化を抑制した。一方、PDGFR-β自己リン酸化における活性イオウドナーの抑制効果は認められなかった。 以上の結果から、活性イオウ分子種によるPDGFによるVSMC遊走の抑制には、Aktシグナル伝達経路の阻害の関与が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までの検討により、活性イオウ分子はPDGFにより生成したROSの消去機能を介して、下流のAktシグナル伝達経路を抑制することで、VSMC遊走を制御することが示唆された。 今後の課題として、VSMC遊走に関与する細胞骨格リモデリングにおける活性イオウ分子の役割の解明必要となってくるが、現在のところ順調に研究は進んでいるものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度のまでに、活性イオウ分子がPDGFシグナル伝達経路を調節することでVSMC誘導を抑制していることを明らかにした。今後は、細胞遊走機能の最終段階である細胞の運動性制御における活性イオウ分子の役割の解明を目標にする。 具体的には、細胞遊走に重要な接着斑やラメリポディア形成における活性イオウ分子の役割について明らかにしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題申請時の予算計画に従い消耗品の購入に助成金をあてていたが、新型コロナ感染拡大および対策により研究を制限されがことが要因であったと考えられる。 来年度から感染対策が緩和される方向性であるため、予定通りの研究遂行およびこれまで制限されていた研究成果の発表を積極的に行っていく予定である。
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