研究実績の概要 |
心臓突然死の大半は致死性頻脈性不整脈による血行動態の破綻によって発生する。致死性頻脈性不整脈に対して心肺蘇生を受けて生還した症例は、その後心臓突然死の二次予防のために植込み型除細動器(ICD)を埋め込まれることがあるが、頻脈性不整脈停止のためになされる電気ショック治療(適切作動)の肉体的、精神的ダメージは大きい。このため、適切作動の可能性の大きい症例を抽出して未然防止策を講じることが求められる。今年度は、二次予防のためにICDを植え込まれた症例に対して、経過観察中に適切作動が発生するかどうかを12誘導心電図から予測する研究を行った。研究対象は当院でICDを植込まれた二次予防190例であり、繰り返し記録された12誘導心電図波形をmedical waveform format encoding rule(MFER)形式に変換し、適切作動症例の検出能を求めた。パイロット研究として93例を抽出し、12誘導心電図波形から4誘導(II, V3, V5, aVR)を選択し、2次元画像に4波形を描画した。さらにそれらを3画像に分割して保存した(1枚あたり3.3秒)。このデータをCNNやVision Transformer, Swin Transformerを利用して解析した。DenseNet121のF-1 scoreが最も高かったが、次いでSwin Transformerも同様の検出能を示した。Swin Transformerは画像認識タスクにおいて学習・推論時の計算量を抑えつつ、CNNと同等の分類精度を示すとされる。もう一つのパイロット研究として心臓突然死の一次予防のためにICDを植込まれた症例を対象として、同様の検討を行った。一次予防患者の作動予測能は二次予防よりも低く、かつモデルによって分類性能がばらつく結果となった。これはデータ数が少なくバランスが良くないためと考えた。解決策としては他施設共同研究や臨床背景などを調整したマルチモーダル研究を想定している。
|