研究課題/領域番号 |
21K08145
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
水柿 秀紀 公益財団法人がん研究会, 有明病院 先端医療開発科, 非常勤医員 (40752689)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / PD-L1高発現 / ペムブロリズマブ / 蛍光多重免疫組織化学染色 / 腫瘍微小免疫環境 |
研究実績の概要 |
NSCLCのPD-L1高発現症(TPS:50%以上)例においてペムブロリズマブ単剤(MONO)がプラチナ製剤併用療法に対し、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の有意な延長を示している。またPD-L1発現(TPS:1%以上)症例を対象とした試験においても、ペムブロリズマブ単剤がプラチナ製剤併用化学療法に対しOSの延長を示した。以上よりPD-L1高発現に対しペムブロリズマブ単剤が標準治療の1つとなっている。一方、PD-L1発現によらずプラチナ製剤併用療法にペムブロリズマブを上乗せにより、PD-L1発現別のいずれのサブグループ解析においても、プラチナ製剤併用化学療法に対しPFSとOSの延長を認めた。以上よりPD-L1高発現症例の治療選択としてMONOとプラチナ製剤併用化学療法+ペムブロリズマブ(COMB)とが存在するが両者を比較した検討はなく、その選択に一定の見解は得られていない。 初回治療としてMONOもしくはCOMBを投与されたPD-L1高発現(TPS:50%以上)未治療進行非小細胞肺癌症例を対象に治療前診断時検体を蛍光多重免疫組織化学染色解析システムにより解析し、非小細胞肺癌における腫瘍微小環境の把握と治療効果との関連を評価する。既報の免疫染色は基本的に単染色であり、各因子との関連性が不明である。また、各報告はそれぞれ個別の評価者によって行われ、データが数値による定量化がなされていないため、再現性の面で課題がある。 本研究では蛍光多重免疫組織化学染色機(Vectra Poralis, Akoya Biosciences)を用い、同一切片で最大9抗体を同時に評価する。各測定項目を測定装置に学習(learning)させた後、自動カウントにより測定し数値化することにより、従来の免疫染色の課題であった評価者間によるばらつきを抑制し、客観性再現性の高いものにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年12月1日から2020年1月31日の期間に全国の34施設において、PD-L1高発(TPS:50%以上)未治療進行非小細胞肺癌と診断されブロリズマブ単剤(166例)もしくはプラチナ製剤併用療法+ペムブロリズマブ(134例)を投与された患者データの収集は完了し論文化し、Cancer Science誌にアクセプトされている(Cancer Sci.2022 Apr 4.doi:10.1111/cas.15361.)。現在、本患者データの生存期間等をアップデートし2回目の論文投稿を行いrevise対応中である。 本研究のプロトコールは完成、一括審査としがん研究会での倫理審査は終了し承認されている。気管支鏡検査で採取した微小検体を用いた免疫多重染色による評価については現在検討を継続中である。微小検体に対し免疫染色を繰り返すことへの検体への負荷等が課題となっている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床データの解析、論文化は完了してるため、評価法が確定次第、各施設から検体を用いて解析する。上記観察研究症例の診断時生検腫瘍組織を用いて蛍光多重免疫組織化学染色を行い、様々な免疫担当細胞や免疫チェックポイント分子の発現を解析し、非小細胞肺癌における腫瘍微小環境の客観的評価を行う。蛍光多重免疫組織化学染色機(Vectra Poralis, Akoya Biosciences)を用い、同一切片で最大9抗体を同時に評価をする。蛍光多重免疫組織化学染色のプロトコール作成は完了している。蛍光多重免疫組織化学染色の結果と上記患者データを比較し治療効果との関連を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在、気管支鏡によって採取した微小検体の免疫多重染色の評価法を検討段階であるため。
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