気管支喘息におけるCYP27A1及び27-hydroxycholesterolの役割を検討するため動物モデルと気道上皮細胞を用いて解析を行った。ダニ抗原(HDM)をマウスに投与すると気道内でCYP27A1の発現の亢進及び27-hydroxycholesterolの増加を認め、同時に好酸球や好中球などの炎症細胞の増加を認めた。さらに気道内に27-hydroxycholesterolを投与することでも、気道内の炎症細胞の増加を認めた。興味深いことには好酸球の増加はさることながら、好中球性気道炎症の誘導が顕著に見られた。CYP27A1阻害作用を持つCa-blockerのニルバジピンや、アナストロゾールを投与しておくと、HDMによる気道内の炎症細胞の増加や気道炎症が有意に抑制された。気道上皮細胞であるBEAS-2B細胞にHDMを投与するとCYP27A1の発現が誘導された。また27-hydroxycholesterolをBEAS-2B細胞に投与すると上皮バリア機能の維持に必要なE-cadherinとZO-1の発現が減弱し、RANTESやeotaxinの産生が増加した。TLR4阻害剤であるLPS-RSやPAR2阻害薬であるGB83で前処理後のBEAS-2BにおけるHDM誘導性のCYP27A1の発言を比較すると、GB83前処理群で有意にCYP27A1の発現が抑制され、HDMはPAR2受容体を介してCYP27A1の発現に関与することが示された。 本研究の結果からダニなどの吸入抗原が気道のCYP27A1の発言を誘導し27-hydroxycholesterolの産生増加を介して喘息病態に関与することが示された。CYP27A1-27-hydroxycholesterolの経路が新たな治療標的となる可能性が示唆された。
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