研究課題
本邦ではCOPD患者500万人以上のうち治療を受けているのは20万人前後と少なく、年間死亡数も約16,000人前後で推移している。「健康日本21 第2次,3次」でも対策を講じるべき生活習慣病としてがん、循環器疾患、糖尿病と並びCOPDが取り上げられている。死亡に大きく関連するCOPD増悪は喀痰の多い症例に多く、本人や家族への労働生産性低下や社会全体の医療費増加をもたらす。COPD増悪抑制は治療戦略において急務である。COPDでは気道粘膜防御能が脆弱であり、現時点でその脆弱性を改善する根本的治療法が存在しない。本研究では、気道感染に伴うCOPD増悪予防に対する包括的治療戦略として、①気道粘膜防御能の脆弱性に影響する質的変化の特定、②新鮮気道分泌液の特性最適化による脆弱性の改善、③全てのCOPD増悪予防を可能とする新規治療法の開発を目指した。令和3,4年度は、我々が開発したブタ気管粘膜面での新鮮分泌液の可視化システムを利用して、定常状態および炎症状態での気道分泌腺からの分泌速度と分泌液pHの測定を行い、HCO3-分泌の中心であるCFTRチャンネルが機能不全および発現量の低下から分泌液pHの病的酸性化を生じることを示し、欧州生理学雑誌に報告した。令和5年度は、近年注目されている末梢気道の評価のためにブタ末梢気道組織を用いて、気道被覆液のpH変化や粘液線毛運動の調節機序解明のため、研究代表者らが保有する高解像度・高速度カメラ付顕微鏡観察システムを用いた末梢気道の機能解析を行っている。本研究ではこの質的異常と気道粘膜防御能脆弱性との関連を明らかにし、細菌やウイルスに対する易感染性を改善する治療薬開発への基礎を提供することが可能である。感染に伴うCOPD増悪やICS投与中の気道感染を制御することで、全てのCOPD増悪予防を目的とした安全で有効な新規治療法の確立と早期臨床応用を目指す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件)
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