研究課題
COPDは、主にタバコ煙に長期間曝露されることで起こる疾患であり、末梢気道の線維化がみられ、肺機能の低下の一因と考えられる。この際、タバコ煙刺激は、Danger signalやIL-1bの発現を誘導し、さらにこれらの分子は気道上皮のTLRやIL1R 経路の活性化を介して、COPD病態の成立に働くものと考えられる。このTLRやIL1R 経路からCOPD病態の成立に至るKey分子の候補として、トロンボスポンジン-1 (TS-1)に注目した。TS-1は、両受容体経路に必須なMyD88欠損マウスにおいて喫煙による発現誘導が抑制される分泌蛋白であり、創傷治癒、血管収縮、CD4+T細胞活性化、マクロファージ遊走、MCP-1産生、TGF-β活性化に働くことが報告されている。そこで、TS-1のCOPD病態に対する関与を検討した。今回は、気道上皮からのTS-1の発現を評価し、COPD病態との関連を検討した。まず、非喫煙者、健常喫煙者、COPD患者由来の培養気道上皮を用いて、48時間培養後の上清中のTS-1の濃度をELISAで測定し比較した。その結果、COPD患者由来の気道上皮は非喫煙者、健常喫煙者の気道上皮に比して、有意にTS-1の濃度が高値であった。また、同様に非喫煙者,健常喫煙者,COPD患者の組織標本での気道上皮でのTS-1発現を免疫組織染色による陽性細胞数割合により評価した。その結果、有意差はつかなかったが非喫煙者、健常喫煙者、COPD患者の順で陽性細胞の割合が上昇した。COPD病態では、気道上皮でのTS-1発現が亢進していることが示唆された。
3: やや遅れている
今年度は、新型コロナウイルス感染拡大のため、呼吸器疾患領域の患者や検体を扱う、研究が制限された。このため、臨床検体の採取や臨床検査のよるデータ収集が施行できない場合が発生した。
改めて、新規の検体採取や患者の登録を行い、現状でも評価可能な、症例や検体を用いてデータを纏めて行く。
新型コロナ感染の影響もあり、呼吸器疾患領域の症例や検体の収集、解析がやや制限されたため、研究の遂行がやや遅延したために次年度使用額が生じた。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (2件)
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