本研究は、HAS2及びその生成物である高分子量ヒアルロン酸(HMW-HA)の異常が小胞体ストレス応答異常やTreg/Th17不均衡によりIL-17優位の病態を形成することで喘息やCOPDといった炎症性肺疾患の重症化・難治化病態および全身合併症を形成するメカニズムを、Has2+/-マウスを用いて解明することである。HAS2遺伝子は既に日本人の喘息感受性遺伝子として同定されており、疾患動物モデルで検証・病態を解明した成果により、HAS2異常を介した喘息発症・難治化の病態解明に貢献しうることが期待される。 計画当初は、1) HAS2機能異常喘息病態における小胞体ストレス応答機能異常の有無。 2) HAS2機能異常喘息病態における治療抵抗性および抗IL-17抗体治療感受性の有無。の検証を行った。その結果、Hsp40やHsp70といった小胞体ストレス応答に関連した分子がHas2+/-マウス群で有意に抑制されていること。Has2+/-マウス群ではOVA刺激で誘発された好酸球性気道炎症がより重篤化し、かつステロイド治療抵抗性であること。さらに、ステロイドと抗IL-17抗体の併用療法が有効であったことを見出し先行研究と併せ論文発表を行った(Front Immunol. 2022)。一方で、RNA-seq解析で示唆されたTregの発現を抑制の有無については十分な検証成果を得られなかったため、エラスターゼ投与モデル等別モデルで検証を試み、Has2+/-マウスではPPE投与後により重篤な気腫形成・気道炎症を認めた。 計画最終年度の2023年は上記背景を踏まえ、COPDモデルの肺組織検体を用いたRNA-seq解析を実施、HAS2機能異常がCOPD重篤化を形成するメカニズムおよび喘息重症化時と共通の治療標的の有無の検討を試みた。抽出された経路については検証を試みたうえで追加業績として論文化を図る。
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