研究課題/領域番号 |
21K08159
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
柳 重久 宮崎大学, 医学部, 助教 (60404422)
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研究分担者 |
坪内 拡伸 宮崎大学, 医学部, 助教 (60573988)
小田 康晴 宮崎大学, 医学部, 助教 (90843235)
重草 貴文 宮崎大学, 医学部, 医員 (90867730)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺間葉細胞 / 発癌 / Pten / シングルセルRNA解析 |
研究実績の概要 |
癌の発生は、正常な成体幹細胞と遺伝子変異を生じた成体幹細胞との競合に依存する確率的プロセスにより生じると考えられている。すなわち、変異した成体幹細胞が癌化するには「周囲の手助け」が不可欠である。われわれは、変異した成体上皮幹細胞は間葉細胞群とのクロストークを破綻させ、発がんに不可欠となる間葉サブクラスターを創出させると仮説を立てた。また、発癌責任間葉サブクラスターから癌関連線維芽細胞、CAFが新生するという仮説を立てた。発癌責任間葉サブクラスター候補の有無を検証するために、未発病期のAT2特異的Pten欠損マウスとコントロールマウスからそれぞれ肺間葉細胞を単離し、シングルセルRNA解析を行った。統計学的有意差を検討するために、それぞれ2匹から3匹のマウス由来の肺間葉細胞をn=1とし、n=4ずつで解析した。具体的には、それぞれhashtag抗体で処理した後にサンプルをプーリングし、シングルセルRNA解析を実施、その後hashtag抗体ごとにサンプルをデマルチプレックス化し、解析した。未発病期AT2特異的Pten欠損マウス由来肺間葉細胞とコントロールマウス由来肺間葉細胞のt-SNEプロットによるクラスタリングの結果、AT2特異的Pten欠損マウス由来の肺間葉細胞では、コントロールマウス由来の肺間葉細胞と比較し5.51倍と、突出して増加するサブクラスターが出現することを発見した。デマルチプレックス化解析の解析の結果、この新規肺間葉サブクラスターは統計学的有意差をもってAT2特異的Pten欠損マウスで増加することがわかった。CAFの起源を同定するための空間的遺伝子発現解析用のマウスも2022年度の解析に向けて準備が整っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要にあるように研究計画はおおむね順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
①空間的トランスクリプトミクスによるCAF起源の同定:肺腺癌を発症したAT2特異的Pten欠損マウスの肺腺癌組織で空間的トランスクリプトミクス解析を行う。新規肺間葉細胞サブクラスターの癌微小環境での局在、癌細胞に密接して局在するかを解析する。② 筋線維芽前駆細胞(AMP)と間葉肺胞ニッチ細胞(MANC)の未発病期の動態:発癌責任間葉サブクラスターとCAFの起源細胞の候補として考えるAMPと肺胞微小環境恒常性維持に必須の細胞であるMANCについてFACSで解析を行う。AT2特異的Pten欠損マウス(SftpcCreERT2:PtenFl/Flマウス)、AMP遺伝系譜追跡(Axin2-TQ)マウス、MANC遺伝系譜追跡(PDGFRalpha-EGFP:Axin2-TQ)マウスとの交配を完了している。未発病期でのAMPとMANCの、数と局在をFACSと共焦点顕微鏡で解析する。③AT2の幹細胞増殖能と幹細胞性への影響:未発病期のAT2特異的Pten欠損マウスから単離した肺間葉細胞とコントロールマウスから単離したAT2をマトリゲル上で共培養する。培養21日後でのAT2コロニー数とサイズ、幹細胞マーカー発現、増殖能、AT2/AT1への分化能を解析する。今回同定した、未発病期のAT2特異的Pten欠損マウスで特異的に増加する間葉サブクラスターで濃縮発現する”X分子”に対応する阻害剤を投与し、幹細胞増殖に対するレスキュー効果を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスの週齢数(1歳齢での解析)により、空間的遺伝子発現解析の予定が2022年度となったため。2022年度に年度使用額を合わせて空間的遺伝子発現解析を行う。
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