研究課題/領域番号 |
21K08162
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
北畠 正大 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60457588)
|
研究分担者 |
上羽 悟史 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 准教授 (00447385)
本津 茂人 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (90458034)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 肺線維症 / ANGPTL4 / TGF-beta / シングルセル遺伝子発現解析 |
研究実績の概要 |
特発性肺線維症 (IPF) は、不可逆的に線維化が進行する予後不良の難治性疾患である。喫煙などによる肺の慢性的な炎症反応によって生じる組織障害と、その修復・治癒過程における細胞外マトリックスの過剰な合成・蓄積が線維化を引き起こし、最終的に機能障害をきたすと考えられている。しかし、その病態は未解明な点が多く、症状を改善させる新規治療薬の開発が強く望まれている。 本研究は、IPF患者の肺の線維化領域の線維芽細胞は非線維化領域の線維芽細胞と比較して、脂質代謝関連分子Angiopoietin-like 4 (ANGPTL4) を高発現することに着目し、ANGPTL4産生機構ならびに線維化に与える影響から肺線維症の病態を明らかにし、ANGPTL4を標的とした肺線維症の診断・治療法の開発に向けた基盤を確立することを目的とする。 まず、ヒト肺上皮細胞株A549ならびにIPF患者由来線維芽細胞のin vitro解析から、ANGPTL4は線維化誘導への寄与が知られているトランスフォーミング増殖因子(TGF)-betaにより刺激後期に誘導され、マイトジェン活性化プロテイン(MAP)キナーゼシグナルを介していることが明らかとなった。また、ブレオマイシン投与による肺線維症動物モデルにおいて、ANGPTL4の発現誘導がタンパク質レベルで確認された。同モデルを用いたシングルセル遺伝子発現解析から、ANGPTL4の主要な発現細胞は線維芽細胞であることが明らかとなった。 以上の結果から、肺線維症を引き起こす過程でANGPTL4の発現が誘導され、病態と関連することが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺線維症においてANGPTL4の発現誘導機構の一端を明らかにできたこと、また動物モデルにおいても線維芽細胞がANGPTL4の主要産生細胞であることを明らかにできたことから、おおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
肺線維症の病態に対するANGPTL4の影響をANGPTL4欠損マウスを用いて解析する。また、シングルセル遺伝子発現解析などから、ANGPTL4発現細胞の表現系を検討する。ANGPTL4の機能性について、siRNAによりANGPTL4の発現を制御し、網羅的遺伝子発現解析により検討する。
|