研究課題/領域番号 |
21K08163
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
太田 洋充 自治医科大学, 医学部, 講師 (40451562)
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研究分担者 |
萩原 弘一 自治医科大学, 医学部, 教授 (00240705)
海老名 雅仁 東北医科薬科大学, 医学部, 教授 (10280885)
椎原 淳 自治医科大学, 医学部, 助教 (20737241)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | びまん性肺胞障害 / MUC4 / 好中球性炎症 / lectin |
研究実績の概要 |
2022年度は肺障害の原因となるMUC4の遺伝子多型を同定するため、次世代シークエンスを使用して遺伝子配列の解析を進めた。その結果、5つの遺伝子多型があることを示した。しかし、原因と考えられる特定の遺伝子多型(COS5)と肺障害との有為な相関関係が証明されなかった。ただし、コホート研究では肺障害の患者は必ずCOS5を持つことが判明した。これまでの検討により、MUC4は肺障害、つまり好中球性炎症の重症化を抑制する機能があり、COS5はを好中球の過剰な炎症を抑制できなくなる”モデルを想定しているが、このモデルに矛盾ない結果と考えている。また、患者由来のMUC4(COS5、R5)を導入した気道上皮細胞(BEADS2B)、正常人由来のMUC4(W3,R6)を導入した気道上皮細胞を作成した。さらにMUC4の糖鎖であるα鎖を分離し回収し、western blottingにより確認した。ヒト血液から好中球を分離し、MUC4の糖鎖部分を添加することにより、好中球の機能に対する作用を検討している。また、好中球エラスターゼによりヒト初代気道上皮細胞に膜型のムチンであるMUC1,MUC4の発現が誘導することをReal Time PCRを用いてmRNAで、また、Western blottingを使用してタンパクレベルで証明した。さらに、TNFα、IFNγ、TGF-β、LPS、IL-6などを添加し炎症あるいは抗炎症サイトカインによるMUC1,MUC4の発現調節により検討を加えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度に一度作成した、MUC4発現細胞ではMUC4の糖鎖分の欠損があることが判明し、2021年度に遺伝子多型毎のMUC4発現vectorを再度作成する必要があった。2022年度はさらにそのvectorを使用し、MCU4発現細胞を作成するために時間がかかった。また、MUC4の糖鎖を分離し、実際に分離できたことを確認するためにwestern blottingを行ったが、MUC4の糖鎖は500k dalton以上の巨大な糖鎖タンパクであり通常の方法ではwestern blottingを行うことができず、western blottingの手法を検討するために時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年-2022年に4つの遺伝子型のMUC4を導入した気道上皮細胞の作成することができ、さらに、糖鎖部分を分離することに成功した。今後は、ヒト好中球を分離し、MUC4の糖鎖と白血球の機能の関係を検討する予定である。特に、白血球の表面には糖鎖のレセプターとしてsiglecなどのレクチンが発現しており、MUC4 の糖鎖が白血球のレクチンのligandとして機能しているかどうかを検討する予定である。 また、間質性肺炎などの患者と正常人の血液サンプル、気管支肺胞洗浄液(BAL)サンプルを使用し、MUC1,MUC4を測定、疾患におけるMUC1,MUC4の臨床、あるいは病態における意義も併せて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
MUC4発現細胞の作成に時間がかかり、MUC4と好中球の機能の検討が予定より遅れたため、若干(10万円未満)の余剰金が発生した。次年度はMUC4と好中球の機能を検討する予定であり、好中球分離試薬やlectinに対する抗体などのために使用する。
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