申請者らのグループは、タンパク質をコードしない長いRNA (long non-coding RNA: lncRNA)の中でもLINC00460に注目し、研究期間を通して基礎実験および臨床データから報告してきた. 基礎実験ではEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌の細胞株(PC9細胞株)にに対し、オシメルチニブを長期間暴露することでオシメルチニブ耐性株を樹立した。オシメルチニブ耐性の獲得により、NSCLC細胞株におけるLINC00460の発現が増加した。 対照的に、低分子干渉RNA(siRNA)をトランスフェクションによるLINC00460のノックダウンはオシメルチニブに対する感受性を増加させたが、In Vitro 転写合成(IVT)したLINC00460をトランスフェクションで導入するとNSCLC細胞株はオシメルチニブに対する感受性が低下した 。さらに、我々はEGFR遺伝子変異陽性肺癌患者から得られた54サンプル(30例の腫瘍組織から抽出したRNAと24例の血漿free-RNA)におけるLINC00460発現を評価した。本研究では、原発巣におけるLINC00460の低発現群(n=24)と比較して、高発現群(n=6)のオシメルチニブに対する奏効率が有意に低く(16.6% vs. 60.0%; P=0.044)、無増悪生存期間(PFS)中央値(224日 vs. 669日; P=0.001)が有意に短く、全生存期間中央値も有意に短かった(724日 vs. 未到達; P=0.011)。 さらに、血漿free-RNA で LINC00460 高発現の患者 (n=12) の PFS は、低発現の患者 (n=12) よりも有意に短かった (PFS 中央値: 655 日 vs. 210 日; P=0.020)。結論として、EGFR遺伝子変異陽性肺癌患者のLINC00460の発現亢進は、オシメルチニブで治療された患者の予後不良因子であることが確認された。
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