研究課題/領域番号 |
21K08171
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
佐々木 高明 旭川医科大学, 医学部, 助教 (70516997)
|
研究分担者 |
水上 裕輔 医療法人徳洲会札幌東徳洲会病院医学研究所, がん生物研究部, 部門長 (30400089)
平井 理子 旭川医科大学, 大学病院, 客員助教 (90596272) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | ゲノム構造異常 / 遺伝子解析 / MET遺伝子のエクソン14欠失変異 / ドライバー遺伝子 |
研究実績の概要 |
がんは、ゲノムの異常によって発生する疾患です。その異常部分を解析することで、発症原因を特定し、具体的な治療法を開発することが可能になります。現代の医学では、高度な技術を用いてゲノムの解析が行われ、その結果を基に患者の診断や治療が進められています。しかしながら、技術の進歩にもかかわらず、全ての遺伝子異常が検出できるわけではありません。一部の異常は依然として検出が難しく、その存在が治療法の開発を阻害する要因となっています。特に、未知の融合遺伝子や選択的スプライスバリアントによるエクソン欠失、繰り返し配列といったゲノム構造異常は、従来の遺伝子解析では検出されず、その解明が大きな課題となっています。本研究では、この難題に挑戦し、特に肺癌細胞に焦点を当ててゲノム構造異常ががん遺伝子の活性化にどのように影響するかを詳細に解析します。具体的には、がん細胞の細胞膜上に発現する受容体型チロシンキナーゼというターゲットに注目し、その遺伝子解析を進めています。この中でも特にMET遺伝子のエクソン14欠失変異は、ゲノムに大きな構造異常を引き起こすとの報告があり、本研究ではその異常を検出できる実験系を確立することに注力しています。これにより、MET遺伝子異常をもつ肺癌細胞の特性を詳細に理解し、それに基づいた治療法を開発することが可能になると期待されています。 将来的には、ドライバー遺伝子陰性の肺癌細胞株や、EGFR, HER2, BRAF, KRAS, ALK, ROS1, RETなどのドライバー遺伝子陽性で薬剤耐性のメカニズムとしてのゲノム構造異常を研究します。新たなゲノム構造異常の検出方法が開発されれば、それに対応する新しい治療法の開発につながります。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1.本研究では、特にMET遺伝子のエクソン14欠失変異に注目し、それに対する実験系の確立を目指しています。しかし、MET遺伝子異常を持つ肺癌細胞株は非常に希少であり、その入手が難しく、当院での症例から細胞株を樹立していますが、増殖が遅く予定していた実験の進行に影響を与えています。 2.最近の技術進歩により、ナノポアシーケンサを用いたがん遺伝子解析のデータベースが構築されつつあります。この新たなデータベースは、ゲノム構造異常の検出に有用である可能性が高く、それを活用した解析への方向転換を検討しています。しかし、この方向転換は新たな解析方法の習得を必要とし、それが研究の進行に一時的な遅延を引き起こしています。
|
今後の研究の推進方策 |
MET遺伝子異常を持つ肺癌細胞株の希少性を補うため、CRISPR-Cas9などのゲノム編集技術を用いて、人工的にMET遺伝子のエクソン14欠失変異を持つ肺癌細胞株を作成することを提案します。これにより、より制御された環境での実験が可能となり、研究の進行をスムーズにします。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の研究計画では、特定のゲノム異常を持つ肺癌細胞株の樹立を予定していました。しかし、予想以上にこの特定の細胞株の取得と樹立が困難で、時間がかかり計画が遅れてしまいました。これにより予定していた研究活動の一部が今年度中に終了せず、予定していた研究資金の使用が遅れ、次年度への持ち越しが発生しました。 次年度の使用額については、まずは遅れている肺癌細胞株の樹立に注力します。そのために、より適切な手法や新たな供給元の探索に資金を投じる予定です。また、既に確立した細胞株に対する遺伝子解析やゲノム構造異常の詳細な研究にも引き続き投資します。これにより、既知の異常をより深く理解し、新たな治療法の開発につなげることを目指します。
|