研究実績の概要 |
肺癌を含む上皮系悪性腫瘍の進行過程において、一般的に上皮間葉転換(上皮間葉移行)が重要な役割を果たしていることが知られている(Brabletz et al, Nature Reviews Cancer, 2018;18:128-34)。上皮間葉転換(上皮間葉移行)は、悪性腫瘍細胞の上皮層からの離脱、組織内浸潤、血管内への遊走、などの他、腫瘍原性や免疫寛容との関わりも報告されており、悪性腫瘍の進行過程の多段階に寄与していると考えられている(De Craene and Berx, Nature Reviews Cancer, 2013;13:97-110)。しかしながら、「転換」ないし「移行」と表現されるそのプロセスについて、中間段階は十分には捉えられてはおらず、細胞レベルでの転換過程の詳細や、細胞レベルで真に転換が行われているのか否かについては、結論は出ていない。その大きな理由は、腫瘍細胞をbulkの状態で検討しているためであり、bulk全体としては転換していることが確認できても、単一細胞レベルでの転換過程や中間段階を捉えることができていないためである。腫瘍細胞をbulkの状態で検討している段階では、細胞レベルで真に転換が行われている可能性の他に、heterogeneousな腫瘍細胞集団の配分の変化の可能性を否定しきれない。そこで、本研究課題においては、細胞レベルでの(すなわち、集団内の構成配分変化だけではない)上皮間葉転換の詳細を明らかにするために、単一細胞遺伝子発現解析の技術を用いて、上皮間葉転換の中間段階の実態を捉え、さらにそこに機械学習を組み合わせることで、時系列データの再現とモデル化を試みた。
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