研究課題/領域番号 |
21K08178
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
千酌 浩樹 鳥取大学, 医学部, 教授 (90283994)
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研究分担者 |
高田 美也子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50523643)
景山 誠二 鳥取大学, 医学部, 教授 (60252706)
中本 成紀 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (70379642)
三宅 直美 鳥取大学, 医学部, 特任教員 (90747205) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | COVID-19 / NK細胞 / ULBP-2 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症(以後COVID-19)の治療方法開発において、免疫療法は今後の重要な戦略の一つである。ウイルス感染時には、NK細胞を中心とする自然免疫が重要な役割を果たしており、実際に最近COVID-19患者におけるNK細胞数や機能の低下が報告さている。しかしながら、機序や低下したNK細胞機能回復方法についての検討はほとんどなされていない。申請者らはこれまで、腫瘍化やウイルス感染時に宿主細胞上に発現誘導されるULBP2分子とNK細胞機能への影響に関する研究を行ってきた。この研究背景を元に、COVID-19患者におけるNK細胞機能と、可溶性ULBP2の関与を明らかにし、その制御によるNK細胞療法の開発を行う本研究を計画した。本研究では、COVID-19患者における、1. 病期ごとのNK細胞機能の変化を明らかにし、2. その機序としての可溶性ULBP2-NKG2Dレセプター系の関与を明らかにする。さらに、3. これを利用したCOVID-19の自然免疫療法を開発することを目的としている。令和4年度では、令和3年度から持続して収集しているCOVID-19患者の血清、末梢血リンパ球、分離ウイルスの解析を80例以上行った。その結果令和4年度には以下の2つの重要な知見を得た。1.COVID-19患者において、ウイルスのクリアランスにB細胞機能と共に、NK細胞機能が関与している可能性が示唆された。2.軽症、中等症、重症の区分別に、初診時、増悪時、回復時のT細胞、B細胞、NK細胞機能を反映する末梢血の各種サイトカインを測定し、有意な変化が起こっているサイトカインを同定した。末梢血リンパ球、血清等NK細胞機能解析に必要な患者検体を収集した。これらの知見は令和5年度の本研究の推進に非常に貴重なものであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の遂行のためには、COVID-19患者より、末梢血リンパ球、血清、分離ウイルスを収集する必要がある。令和3年度も患者検体収集は75例に上ったが、令和4年度もさらに20例以上の患者から検体を採取することができ、令和4年度と一部令和5年度の検討に必要十分な量の臨床検体を確保することができた。 また、患者分離ウイルスのゲノム解析も順調に進行し、100株以上のウイルスゲノムを解析した。患者末梢血サイトカイン測定、患者末梢血リンパ球の比率、活性化状況のフローサイトメトリーによる解析も順調に進んでいる。また、令和5年度は、持続的SARS-CoV-2感染患者検体を解析することにより、NK細胞がウイルスクリアランスに与える影響などの新しい知見をえることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3,4年度に収集した患者検体(末梢血リンパ球、血清)をもとに、患者の病期ごとのNK細胞機能、NK細胞活性化状態、可溶性ULBP2などの測定を引き続き行う。 患者分離ウイルスについては、その増殖能、感染能などの基礎的な検討と共に、次世代シークエンサーNGSによるウイルスゲノム解析を引き続き行い、ウイルスの生物学的特性や、NK細胞刺激能の原因となる遺伝子変化を検討する。さらに患者分離ウイルスを用いて、in vitro感染モデルを構築する。このための細胞(Cul-3)も入手済みである。このことによりCOVID-19患者における、1. 病期ごとのNK細胞機能の変化を明らかにし、2. その機序としての可溶性ULBP2-NKG2Dレセプター系の関与が明らかになると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度も、昨年に引き続き患者検体の採取、収集に注力したため、ウイルス株の解析数が当初予定していたより少なく、NGSの必要キット数が少なくなり、次年度に繰り越すことになったため。次年度では、引き続きNGSに関わる試薬等、並びにELISAキット、フローサイトメトリ―用の試薬の購入とともに、in vitro感染モデルに関する実験機材(細胞培養培地、抗体、トランスフェクション試薬等)を購入する予定である。
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