細胞接着装置の形成と維持にはアクチン細胞骨格が必須であり、なかでもアクチン動態を制御するアクチン重合因子は中心的な役割を担っている。アクチン細胞骨格の制御因子であるFormin蛋白質は、真核生物に広く存在するアクチン重合核形成促進因子である。Formin蛋白質は、哺乳類において15種類の存在が確認されており、その中のFhodサブファミリーにはFhod1とFhod3の2つが存在する。我々の研究室では、Fhod3欠損マウスを用いることで、Fhod3は心臓に発現し、心筋サルコメア内のアクチン線維形成を担うこと、心臓の発生に必須であること、さらに出生後の心臓においても、心機能の維持並びに負荷への肥大応答に必要であることを明らかにしてきた。一方で、Fhod1は、細胞内のアクチン線維の形成に関与していること、ROCKキナーゼの下流でFhod1が活性化し機能すること、Fhod1が正常な心臓にはほとんど発現しておらず、肺組織に強く発現していることを明らかにしてきた。本研究で我々は、肺組織の中でも特に肺胞マクロファージにFhod1が強く発現していることを明らかにした。そこで、我々が作出したFhod1欠損マウスから採取した肺胞マクロファージの初代培養細胞を用いてその表現型を検討した。その結果、Fhod1欠損マウス由来の肺胞マクロファージは、特定の基質に対する細胞伸展能に異常を示すこと、走化性因子に対する細胞遊走においても特定のアクチン細胞骨格の構築に異常を示すことを明らかにした。以上の結果は、Fhod1が基質への接着装置の形成を通じて細胞遊走能に重要な役割を果たすことを示唆している。
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