研究課題/領域番号 |
21K08184
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
町田 健太朗 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 客員研究員 (90597569)
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研究分担者 |
井上 博雅 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30264039)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 気管支喘息 / ステロイド抵抗性 / 2型自然リンパ球 |
研究実績の概要 |
気管支喘息の治療において、抗炎症効果を有するステロイド薬は最も基本となる薬剤であるが、喘息患者の約15%に高用量の吸入ステロイドや経口ステロイドを用いてもコントロールが困難なステロイド抵抗性の重症喘息患者が存在する。重症喘息患者におけるステロイド抵抗性誘導のメカニズムは十分には解明されておらず、ステロイド抵抗性の病態や機序を明らかにし、重症喘息の新たな治療法を開発することは重要な課題である。 重症喘息の約半数に好酸球性気道炎症を認め、その病態にはIL-4、IL-5ならびにIL-13といったが2型サイトカインが関与する。2型サイトカインは主に獲得免疫系のTh2リンパ球、自然免疫系の2型自然リンパ球(ILC2)により産生される。ILC2は重症喘息患者の末梢血や気道で増加していることが報告されており、喘息の重症難治化の機序に関与している可能性が指摘されている。また、ILC2が喘息のステロイド抵抗性に関与していることも報告されている。 本研究ではILC2に発現しているDeath receptor 3(DR3/TNFRSF25)とそのリガンドであるTNF-like protein 1A(TL1A/TNFSF15)のシグナルに注目し、ILC2のステロイド抵抗性誘導の分子機序を解析することを目的としている。 ILC2はその表面にDR3を発現しており、IL-2、I L-33、TSLPの刺激によりその発現が増強される。健常者、喘息患者の末梢血由来のILC2を分離し増殖培養を行い、IL-2存在下で、I L-33、TSLP、TL-1A、それぞれ、単独もしくは組み合わせて刺激を行うとIL-5、IL-13が産生されることを確認した。培養液にデキサメサゾンを加えるとそれぞれ単独刺激によるサイトカイン産生は抑制されるが、TL1AとTSLPを投与するとILC2に対するステロイドの抑制効果が減弱する。好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸中のILC2はTL-1Aの刺激によりステロイド抵抗性が誘導されることを確認し、抵抗性誘導のメカニズムについて検討を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健常人の末梢血由来の2型自然リンパ球(ILC2s)を分離、増殖培養し、各種刺激因子で活性化し、サイトカインの産生能やステロイド抵抗性の検討を行った。TL-1Aで刺激を行うとステロイドの効果は減弱するが期待された効果は得られていない。一方で、好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸由来のILC2は、TL-1Aの刺激によりステロイド抵抗性が誘導されるため、鼻茸中のILC2を用いてステロイド抵抗性の詳細なメカニズムの検討を行っているが、新型コロナウイルスの流行により、喘息患者の末梢血の採取、好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸の手術検体などのヒト由来検体の収集が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、喘息患者由来、好酸球性副鼻腔炎患者由来の手術検体の収集を促進している。関連病院へも協力を依頼し検体の収集を行っている。 今後は末梢血由来のILC2と鼻茸由来のILC2を比較し、DR3/TL-1Aシグナルによるステロイド抵抗性のメカニズムについてさらに検討を進めていく。
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