肺癌における糖鎖分子を標的としたEGFR-TKI耐性克服の試み

2022 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 21K08187
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 高橋 史行 順天堂大学, 医学部, 准教授 (70327823)
• 研究分担者: 田島 健 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50384102) ; 藤平 陽彦 順天堂大学, 大学院医学研究科, 非常勤助教 (50721057) ; 高橋 和久 順天堂大学, 医学部, 教授 (80245711)
• 研究期間 (年度): 2021-04-01 – 2024-03-31
• キーワード: 肺癌 / 薬剤耐性 / 糖鎖分子

研究実績の概要

細胞表面蛋白の糖鎖修飾は生物学的に重要な役割を果たしており、特定の糖転移酵素は癌の転移や薬剤耐性に寄与していることが知られている。一方、第一世代EGFRチロシンキナーゼ阻害剤（EGFR-TKI）であるGefitinibは、EGFR遺伝子変異をもつ非小細胞肺癌（NSCLC）において劇的な腫瘍縮小効果を示すが、最大の臨床的問題点は薬剤耐性であり、最も頻度の高い耐性機序としてEGFR T790M変異が知られている。このT790M変異を標的とする第三世代EGFR-TKIであるOsimertinibは臨床的に高い有効性を認めているが、Osimertinibに対しても薬剤耐性が獲得されてしまうため、その予後改善には新規治療戦略が必要である。本研究の目的は、EGFR-TKI耐性における糖鎖変化に着目し、その生物学的意義や機能を解析し、糖鎖分子を標的とした癌治療および耐性克服へ応用することである。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

現在までに、研究代表者はOsimertinib耐性NSCLC細胞株やレクチンアレイを用いた糖鎖解析システムを確立している。

今後の研究の推進方策

EGFR-TKI耐性細胞における糖鎖解析を継続し、さらにRNAseqデータを用いて糖鎖修飾を担う糖転移酵素などの網羅的発現解析も進めて行く。また臨床検体を用いて、レクチン組織染色による解析についても進めてゆく。

次年度使用額が生じた理由

当初の予定よりも解析が遅れており、次年度にも糖鎖解析および機能解析を行い、さらに臨床検体でのレクチン染色なども進めてゆくため。

研究成果

• [雑誌論文] Clinical relevance of PD-L2 expression in surgically resected lung adenocarcinoma. (2022)
  • 著者名/発表者名: Takamochi K, Hara K, Hayashi T, Kohsaka S, Takahashi F, Suehara Y, Shimokawa M, Suzuki K.
  • 雑誌名: Lung Cancer 巻: 168 ページ: 50-58
  • DOI: 10.1016/j.lungcan.2022.04.011.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Distinct properties of pure and mixed-type high-grade fetal lung adenocarcinomas by genetic profiling and transcription factor expression (2022)
  • 著者名/発表者名: Kishikawa S, Hayashi T, Saito T, Takamochi K, Sasa K, Suehara Y, Takahashi F, Sasahara N, Kohsaka S, Suzuki K, Yao T.
  • 雑誌名: Virchows Archiv 巻: 480 ページ: 609-619
  • DOI: 10.1007/s00428-021-03247-7.
  • 査読あり
• [雑誌論文] Survival past five years with advanced, EGFR-mutated or ALK-rearranged non-small cell lung cancer (2022)
  • 著者名/発表者名: Sonobe Shimamura S, Shukuya T, Asao T, Hayakawa D, Kurokawa K, Xu S, Mitsuishi Y, Tajima K, Shibayama R, Shimada N, Takahashi F, Takahashi K.
  • 雑誌名: BMC Cancer 巻: 25 ページ: 323.
  • DOI: 10.1186/s12885-022-09421-7
  • 査読あり
• [雑誌論文] A novel therapeutic strategy targeting the mesenchymal phenotype of malignant pleural mesothelioma by suppressing LSD1. (2022)
  • 著者名/発表者名: Wirawan A, Tajima K, Takahashi F, Mitsuishi Y, Hidayat M, Winardi W, Hayakawa D, Matsumoto N, Izumi K, Asao T, Ko R, Shimada N, Takamochi K, Suzuki K, Abe M, Hino O, Sekido Y, Takahashi K.
  • 雑誌名: Mol Cancer Res 巻: 20 ページ: 127-138
  • DOI: 10.1158/1541-7786.MCR-21-0230.
  • 査読あり
• [学会発表] 非小細胞肺癌における抗ミュラー管ホルモン2型受容体 (AMHR2)の発現と細胞増殖における役割の検討 (2022)
  • 著者名/発表者名: 濃沼淑芳, 光石陽一郎, 高橋史行, Wira Winardi, 金森幸一郎, 林大久生, 高持一矢, 鈴木健司, 髙橋和久
  • 学会等名: 日本呼吸器学会
• [学会発表] FGFR遺伝子のがん化能および薬剤感受性に対する網羅的機能解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 中村育子、高阪真路、池上政周、上野敏秀、高橋史行、高橋和久、間野博行
  • 学会等名: 日本呼吸器学会
• [学会発表] 進行・再発性非小細胞肺癌における初回癌免疫治療の臨床的予後予測モデルの構築 (2022)
  • 著者名/発表者名: 宮脇太一、内藤立暁、高橋史行、高橋利明、髙橋和久
  • 学会等名: 日本呼吸器学会
• [学会発表] Comprehensive functional evaluation of variants of fibroblast growth factor receptor genes (2022)
  • 著者名/発表者名: 中村育子、高阪真路、上野敏秀、高橋史行、高橋和久、間野博行
  • 学会等名: 日本癌学会