研究課題/領域番号 |
21K08188
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
岡田 直樹 東海大学, 医学部, 助教 (90815408)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 重症喘息 / ILC2 / TSLP / IFN / IL-33 |
研究実績の概要 |
重症喘息では、最も重要な喘息治療薬であるコルチコステロイド(以下、CSと略す)耐性が起こり、より高用量のCS投与は易感染性と真菌関連呼吸器疾患を誘導する。重症喘息ならびに好酸球性喘息において、T cell receptorを発現しておらず抗原特異性を持たない自然免疫細胞であるILC2が増殖していることから、ILC2の2型炎症の成立が非アトピー型喘息への深く関与していることが示唆されている。成人の日本人重症喘息患者の6割以上の症例で末梢血好酸球増多を伴い、さらにその約2/3が非アトピー型であることを報告されている。また、当研究グループは、本来はCS感受性であるILC2が、TSLPの存在下でCS抵抗性となり、治療抵抗性好酸球性気道炎症をきたす機序を明らかにした。抗TSLP抗体製剤はILC2のCS耐性獲得を抑制する反面、気道の易感染性が促進されるおそれがある。 IFNを介したILC2抑制機構と喘息患者における機能不全 申請者の所属する研究室グループによりⅠ~Ⅲ型IFNsはILC2の増殖・活性化の抑制機構として重要であることを明らかにした。本研究は、疑似的ウイルス感染刺激で増悪する喘息モデルマウスにTSLP刺激が加わる際、TSLP存在下でⅠ~Ⅲ型IFNsの産生抑制が起こるかどうか、TSLP存在下ではⅠ~Ⅲ型IFNsが存在するにも関わらずILC2活性化の抑制が回避される機序を明らかにすることで、臨床上市が予定される抗TSLP抗体製剤の長所、短所をより明確にすることを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IL-33によって惹起されるILC2依存的な(non-atopicな)喘息モデルにおいて、TLR3 ligandによ る擬似的なRNAウイルス感染状態で病態が増悪したことから、気道へのウイルス感染によって 喘息患者の病態が増悪することが再現された。合成2本鎖RNAのpoly I:Cは、RNAウイルス増 殖時に一時的に2本鎖となった状態をミミックするもので多くの細胞でTLR3を介して認識されて IFNsの産生を誘導する。TSLPとIL-33はウイルス感染によってnecrosisした細胞の核から放出 されるサイトカインであるが、IL-33とTSLPを敢えて分けて投与することで IL-33で惹起される ILC2依存的なnon-atopicな喘息にIFNs産生が及ぼす影響、あるいはIFN感受性にTSLP影響を 及ぼす場合もあるか機序を検討した。好酸球増多させるIL-5、気道過敏性上昇や気道粘液産 生細胞(杯細胞)過増殖に関わるIL-13産生量は、 IL-33単独投与したマウスにpoly I:Cした群 よりもIL-33/TSLP投与したマウスにpoly I:C投与した群で高い傾向にあると同時に、ILC2の活 性を抑制するIFNsの産生は、逆のIL-33単独投与したマウスにpoly I:C投与した群で最もIFN産 生上昇し、 IL-33/TSLP投与したマウスにpoly I:C投与した場合ではIFN産生量が抑制されたこ とから、喘息患者が気道へのウイルス感染により喘息増悪し、その際のIFN産生量は健常者が 気道へのウイルス感染した場合よりも少ないことへの整合性がついた。気道上皮細胞がIFN-λ の産生細胞の一つであることが示されたが、TSLPによる産生抑制は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はⅠ~Ⅲ型IFNsの中でも最もILC2抑制に寄与するものは何か、最も多くIFNs産生する主要な細胞の特定と抗体によるその細胞のdepletionがILC2抑制の解除に働くか、TSLPによるILC2のCS耐性獲得機序とIFNsによるILC2抑制機序のどちらがシグナルの上位にあるか、TSLP存在下でIFNsによるILC2抑制効果が抑制される可能性(IFN受容体数減少、細胞内シグナル抑制によるIFN感受性低下)などについて検討する必要がある。IFNの産生細胞であろうと考える気道上皮細胞、樹状細胞 (マウス骨髄から分化誘導、あるいは、肺から単離)を用いて、2型炎症サイトカイン(IL-4、IL-13、TGF-β)とでPoly I:C刺激した結果としてIFNs、特にIFN産生がTSLPの存在/非存在下で変化するか、ELISA法、real-time RT PCRで調べる。ヒト気道上皮細胞株であるBEAS-2B細胞を用いた実験は既に行われたが、TSLP存在下でIFN産生は抑制されない結果であった。また、樹状細胞のIFN産生抑制の有無を調べるため、抗CD11c抗体を投与して樹状細胞のdepletionを行い、ILC2依存の喘息モデルでIFNsの産生が変化するか、単離されたILC2の2型炎症サイトカイン産生活性や、ILC2サブセット誘導に関与する転写因子(T-bet、GATA3、RORγT)についてmRNAレベルで変化があるかどうか、real-time RT PCRで検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験物品に使用予定
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