研究課題/領域番号 |
21K08191
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
瀧川 奈義夫 川崎医科大学, 医学部, 教授 (60325107)
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研究分担者 |
越智 宣昭 川崎医科大学, 医学部, 講師 (80611615)
山根 弘路 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50624897)
中西 秀和 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (50309548)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | EGFR / プロテオーム / メタボローム / トランスクリプトーム |
研究実績の概要 |
マウスBa/F3細胞にEGFR exon19欠失変異(M1)とEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)耐性遺伝子であるEGFR T790M+exon19欠失変異(M2)を導入した細胞のトランスクリプトーム解析を行なったところ、尿素輸送に関与する遺伝子の発現亢進と細胞増殖・代謝に関与するROR1遺伝子の発現低下を認めた。次にヒト肺腺癌細胞株でEGFR T790M+exon19欠失変異を有するRPC-9において、オシメルチニブにsiROR1を併用することにより、オシメルチニブの50%増殖抑制濃度は0.0477±0.00840μMから0.00342±0.00182μMと10倍以上の感受性の上昇が認められた。 Ba/F3へのEGFR遺伝子野生型導入株、M1、EGFR exon21 L858R変異導入株(M3)、およびM1のオシメルチニブ耐性株(M1OsR)の4つの細胞株のメタボローム解析を行なったところ、代謝産物によるクラスター分類が可能であった。M3はM1に比しグルタチオンが増加し、M1OsRはM1よりグルタチオンやグルタミン酸の増加が認められた。次にヒトEGFR exon19欠失変異細胞であるPC-9のオシメルチニブ耐性株(PC-9/Osm)のマイクロアレイ解析を行なったところ、アミノ酸輸送に関する遺伝子発現が亢進していた。 プロテオーム解析でM1とM3を比較したところ、M3にはトランスケトラーゼ上昇が認められた。EGFRのL858R変異はexon19欠失変異に比し、一般的にEGFR-TKIの効果が乏しい。トランスケトラーゼの制御によりEGFR-TKIの感受性の差を説明可能かどうか検討中である。 EGFR遺伝子変異は獲得耐性も含めて、グルタチオン代謝経路やペントースリン酸経路に差が認められた。これらの代謝経路から新たな薬剤耐性機序を解明しその耐性を克服可能な薬剤を研究している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度に計画していた、Chromiumシングルセルコントローラーを用いてオシメルチニブ感受性細胞と耐性細胞のシングルセル解析を前倒しでおこなったが、現状ではうまくいっていない。その他の計画遂行は順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度中にはシングルセル解析の結果を得るため、その専門家に相談中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培地、試薬等の使用量が予想より少なかったが、今後購入予定である。コロナ禍で現地学会出席ができなかった。
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