研究課題
種々のEGFR遺伝子変異細胞株をマルチオミクス解析で比較し、それぞれのEGFR変異に特異的な治療戦略の基盤となる蛋白、遺伝子、および代謝経路を見出した。オシメルチニブ耐性細胞株 (PC-9/OsmR2) をEGFRエクソン19欠失(19Del)肺癌細胞株 (PC-9) へのオシメルチニブ曝露により樹立した。さらに、EGFR 19Del (M1)、L858R/T790M/C797S (M6)、および L858R/C797S (M8) 発現ベクターをBa/F3細胞に導入し、M1のオシメルチニブ耐性株 (M1/OsmR)を同様に樹立した。マイクロアレイ解析ではPC-9/OsmR2ではSLC1A3mRNAが顕著に増加し、SLC1A3蛋白も高発現であった。PC-9/OsmR2細胞では、siSLC1A3との併用により感受性が回復した。SLC1A3はグルタミン酸の輸送において機能するため、グルタミナーゼ阻害薬(CB-839)またはSLC1A3阻害薬(TFB-TBOA)の併用により高感受性となった。メタボローム解析により、M1/OsmR細胞はM1細胞よりもグルタミンとグルタミン酸が有意に多かった。CB-839とオシメルチニブ併用は、M6細胞に対して相乗効果、M8細胞に対して相加効果をもたらした。SLC1A3の過剰発現がオシメルチニブ耐性機序のひとつであり、グルタミン/グルタミン酸標的治療により耐性克服の可能性が示唆された。シングルセル解析では、オシメルチニブの曝露により24遺伝子の顕著な発現変化と免疫関連のシグナル変化が認められた。またEGFRと同様のオンコジーンドライバーであるALKに関しては、アレクチニブ耐性ALK変異株ではSOD1が耐性に関与することを発見し、siSOD1との併用によりアレクチニブ感受性が回復することが示された。以上、耐性克服に関する代謝特性を含む新知見が得られた。
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