研究課題/領域番号 |
21K08193
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研究機関 | 愛知県がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
清水 淳市 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 研究員 (80796889)
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研究分担者 |
田口 歩 愛知県がんセンター(研究所), 分子診断TR分野, 分野長 (50817567)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害剤 / 免疫関連有害事象 / 血液バイオマーカー / プロテオミクス / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の登場により、生体の免疫が癌を拒絶し得ることが明らかとなった。しかし、ICI単独療法での奏効率は10-40%と限定的である。また、ICIの特徴として、自己免疫性の免疫関連有害事象(irAE)を起こす症例がある。これらの副作用を予測することは困難である上に、重篤な場合は致死的になりうることから、ICIの効果だけでなく、HPDやirAEの発症を、その使用前に予測できるバイオマーカーの開発は、喫緊の課題である。腫瘍に対する液性免疫応答は発癌過程の極めて早い段階で誘導されており、それに伴って癌抗原を認識する血中自己抗体が出現することが知られてきた。また、自己免疫疾患や血中自己抗体の存在は、免疫チェックポイント阻害剤の効果やirAEの発症と関連していることが示唆されている。このことから、血液中の抗原や抗原―自己抗体複合体は、免疫チェックポイント阻害剤の奏功例や無効例の予測だけでなく、重篤なirAEの発症リスクが予測可能なバイオマーカープラットフォームとして有望であると考えられる。本研究の目的は、高感度プロテオーム解析技術を応用した血中タンパク質と抗原―自己抗体複合体の網羅的なプロファイリングから、革新的なICIの効果・副作用予測法の開発を目指すことである。本年度は、新規マススペクトロメトリーの導入に伴い、血漿プロテオーム解析プロトコルの最適化を中心に研究を進め、高深度の血漿タンパク質プロファイリングが可能になった。現在ICI投与前と6週後(またはirAE発症時)に採取されたペア血漿検体のプロテオーム解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、電界非対称イオンモビリティスぺクトロメトリー液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC-FAIMS-MS/MS)を導入したため、血漿プロテオーム解析プロトコルの最適化を中心に研究を進めた。その結果、2,000個超の血漿微量タンパク質、1,000個超の免疫グロブリン結合タンパク質が同定定量できるようになり、世界最高深度の血漿タンパク質プロファイリングが可能になった。また、新たに東大呼吸器内科との共同研究を立ち上げ、ICI使用症例の血漿検体が提供されることとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はICI投与前と6週後(またはirAE発症時)に採取されたペア血漿検体などについて、プロテオーム解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、プロテオーム解析計画にずれが生じたため、次年度使用額が生じた。解析計画を修正し、今年度使用する予定である。
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