研究課題/領域番号 |
21K08194
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
木田 博 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター(臨床研究部), 独立行政法人国立病院機構大阪刀根山医療センター, 呼吸器内科部長 (80512988)
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研究分担者 |
福島 清春 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (00752156)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MGIT-seq / MLST / 非結核性抗酸菌 / マクロライド耐性 / 亜種 / 新種 / ツカムレラ |
研究実績の概要 |
・従来の喀痰抗酸菌検査では、液体培養法(MGIT法)陽性となった場合、患者さんの治療方針を決定するために、引き続き、菌種同定検査や薬剤感受性検査を別途行う必要がある。また、菌種同定検査は核酸増幅法や質量分析法など複数の手技の組み合わせを要する手間のかかる検査であるにもかかわらず、亜種レベルに至る菌種同定はほとんど不可能であった。本年度我々は、Multi-locus sequence typing (MLST)法を用いた新規NTM菌同定手法を液体培養法陽性検体に応用したMGIT-seq法を開発した。そして肺非結核性抗酸菌症患者138名を前向きに登録し、MGIT-seq法と従来法を比較する臨床研究を行った。MGIT-seq法による菌種同定は従来法による菌種同定と99.1%一致した。また、MGIT-seq法では84.5%症例で亜種レベルまで起因菌を同定可能であった。さらにMGIT-seq法によるマクロライド薬剤感受性予測能は感度90.5%、特異度97.6%であった。我々はこれらの結果を、第62回日本呼吸器学会学術講演会や第97回日本結核・非結核性抗酸菌症学会学術講演会で発表するとともに、論文を作成した(投稿済み)。 ・MGIT-seq法を臨床現場で応用する中で、免疫不全を有さない患者で発症した希少菌種Mycolibacterium mageritenseによる胸膜炎症例 (Front Med, 2021)、新種菌Mycolibacterium toneyamachuris (BMC Infect Dis, 2020), Mycobacterium senriense (Int J Syst Evol Microbiol, 2022)、Tsukamurella toyonakaense (Emerg Infect Dis, 2022)を発見し、それぞれ論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・予定通り、前向き臨床研究を完遂できた。 ・希少菌種症例報告1報、新種症例報告3報を報告できた。
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今後の研究の推進方策 |
・肺非結核性抗酸菌症ガイドラインにおいて、喀痰抗酸菌塗沫検査陽性の患者さんは治療開始が推奨されている。次年度我々は、喀痰抗酸菌塗沫陽性検体から培養を経ず直接、菌種同定、薬剤感受性予測を行う方法を開発する。 ・肺MAC症において、起因菌のマクロライド耐性化は臨床経過に重大な影響を与える。一方、起因菌がマクロライド耐性化した場合でも、経過中にマクロライド感受性が戻ってくる症例も存在する。この現象に対する分子疫学的解析を行う。 ・MGIT-seq法を臨床現場で応用する中で、新種と考えられる菌株が複数見つかっている。検討を進め、新種発見に繋げていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
・前向き臨床研究のリバイズ追加実験や英文校正、出版費用など ・次年度研究計画における「喀痰抗酸菌塗沫陽性検体から培養を経ず直接菌種同定、薬剤感受性予測を行う方法開発」、「MAC菌マクロライド耐性化に関する分子疫学的研究」に関わる消耗品など ・新規論文作成に必要な費用など
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