研究課題/領域番号 |
21K08195
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
榊原 純 (小西純) 北海道大学, 大学病院, 講師 (50374278)
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研究分担者 |
木下 一郎 北海道大学, 大学病院, 教授 (40343008)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小細胞肺癌 / Prox1 / 治療標的 |
研究実績の概要 |
Prox1の小細胞肺癌(SCLC)における腫瘍原性に与える影響についての研究;SCLC細胞株のProx1の発現を最初に確認した。4つの(SCLC細胞株(MS-1、HCC827、SBC-3,SBC-5)を使用しProx1の発現をウエスタンブロットを用いてタンパク発現を確認したところMS-1、HCC827でProx1の発現を認め残りの2つのSBC-3とSBC-5のSCLC細胞株の発現は低かった。さらにPCRでもProx-1の発現を確認しタンパク発現とmRNAの発現が同様の結果であることを確認した。このため発現抑制のための実験にはMS-1とHCC827を使用することにした。Prox1の機能解析のために2つの細胞株でsiRNAを用いてProx1の発現が抑制されていることを確認した。増殖能についてMTT assayを行ったところProx1の抑制によりコントロールと比較して細胞増殖は増加した。clnogenic assayも行いMTT assayの結果と同様にProx1の抑制によりcolony数が増加した。さらにinvasion assayとmigration assayをtranswell chamberを用いて確認したところProx1の抑制によりコントロールと比較して細胞遊走能、浸潤能ともに増加した。 Prox1とNotch pathwayの関連についての検討:Prox1の抑制時にNotch 関連タンパク(Notch1-4、HES-1、HEY-1)の発現をウエスタンブロットにて確認したがコントロールと比較してProx1抑制時にNotch関連タンパク発現に変化を認めなかった。さらにPCRでmRNAについても検討したがProx1の発現の抑制時に変化を認めなかった。 CDDP耐性株におけるProx1の影響:当科でCDDP耐性株を当科で樹立しておりCDDP耐性株(MS-1)においてProx1の発現を確認したところProx1の発現が低下しており薬剤耐性との関与が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
SCLCにおけるProx1の機能を確認するためにProx1の発現確認後細胞実験を行う予定としていた。その結果としてProx1の発現の高いSCLC細胞株でProx1を抑制した場合の細胞増殖に与える影響、細胞浸潤能、遊走能に与える影響を確認することができた。さらにProx1と関連するシグナルとしてNotch pathwayの解析を行う予定としておりそちらも発現の解析がされた。ここまでは予定していた進捗通りである。 Prox-1体発現のSCLC細胞株にProx-1 vectorをトランスフェクションしoverexpression細胞株を樹立する予定としていたが時間を要しており細胞株樹立にまだ少し時間がかかると思われる。 またNotch関連タンパクとProx-1の関連を調べる予定としていたがこちらは関連性に乏しく今後はcell cylce関連タンパクとの関係性を検討する予定とした。さらにcell cycleに与える影響をflowcyteを用いて検討する。
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今後の研究の推進方策 |
Prox1強制発現時のSCLCの腫瘍原性に与える影響についての確認:Prox1発現が陰性のSCLC細胞株(SBC-3、SBC-5)を使用しProx1をover expressionした場合にMTT assayやclonogenic assaを用いてコントロールと比較して細胞増殖能を確認する。さらにtranswell chanberを使用し遊走能、浸潤能を検討する。 Prox1の下流シグナルや他のシグナルとの相互作用についての研究:当初はNotchとの関連を予想していたが今までの実験ではNotchとの関連は乏しいことが確認された。このためProx1はcell cycleへの影響もあることが報告されていることからProx1の発現を変化させたときのcell cylce関連タンパクの発現をwestern blotやPCRを用いて確認する。またflow cyteを用いてcell cylceの変化を確認する。 マウスモデルにおけるProx1のSCLCへの増殖に与える機能についての研究;ヌードマウスにコントロール、Prox1をover expressionしたSCLC細胞株を皮下移植し腫瘍のサイズを2日ごとに測定し腫瘍増殖に与える影響を検討する。また皮下腫瘍のprox1の発現やcell cylce関連タンパクの発現をwestern、PCRを用いて確認する。さらに皮下腫瘍を免疫染色しProx1の腫瘍における発現を確認する。 ヒトSCLC検体におけるProx1の発現の検討;SCLC検体を用いてProx1の発現を免疫染色について検討する。Prox1発現が高い症例と低い症例における患者背景を検討する。またProx1高発現症例と低発現症例における治療効果の違いやPFS(progression free survival)、OS(overall survival)に差があるかどうかを検討する予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
トランスフェクションに関わる実験が遅延したために未使用が一部生じた。今後の使用額として細胞培養関連費用:細胞実験を継続して行うため細胞実験に関わる費用として培養関連試薬、プレートなどの使用が生じる。さらに培養実験室の使用量が生じる。またベクターのための費用やトランスフェクション関連の試薬についての費用が生じる。 動物実験に関わる費用:動物実験を行うためマウス代、餌代、動物実験施設の使用料、飼育料が発生する。
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