研究課題/領域番号 |
21K08200
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
野口 智史 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (60732807)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 間質性肺炎 / 肺癌 / バイオマーカー / Gremlin1 |
研究実績の概要 |
間質性肺炎は喫煙とは独立した肺癌の危険因子の一つであるが、両疾患を結びつける分子病態は未解明の部分が多い。まず公共データベースを用いた解析を行い、BMPアンタゴニストの一つであるGREM1(Gremlin-1)に注目した。 間質性肺炎のため肺移植を受けた患者由来の切除肺組織から初代培養の肺線維芽細胞を樹立し、線維化部位と非線維化部位を比較したところ、線維化部位に由来する肺線維芽細胞においてGREM1の発現が高かった。さらにブレオマイシン誘導マウス肺線維症モデルの肺組織において、コントロールと比較してGREM1の発現が高かった。 次に、特発性肺線維症(IPF)患者から得られた肺組織のscRNA-seqの公共データの解析を行った。肺線維症における線維芽細胞のサブタイプを探索したところ、ACTA2陽性の筋線維芽細胞がPOSTN陽性あるいはNPNT陽性の細胞分画に分けられることを見出した。このうちGREM1はPOSTN陽性の筋線維芽細胞において発現しており、この細胞分画において特異的な発現がみられる新規のマーカーとしてCOL10A1やLRRC15を同定した。また、IPF患者の肺を用いた高感度RNA-ISH法により、GREM1はPOSTN-highの筋線維芽細胞で比較的特異的に高発現であることをin situでも確認した。 間質性肺炎の移植肺から独自に樹立した初代培養肺線維芽細胞を用いて、GREM1の機能解析を行った。具体的にはGREM1に対するsiRNAを用いた実験で、GREM1が細胞増殖やコラーゲンゲル収縮を促進すること、各種コラーゲン発現を増加させることを見出した。今年度はさらにサンプルサイズを増やし、またほかの病態(PPFEなど)の初代培養肺線維芽細胞を用いて、同様の実験を行い、信頼性のある結果が得られた。この時点で論文投稿すべく、現在論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
間質性肺炎と肺癌の両疾患を結びつける遺伝子として公共データベースを用いた解析でGREM1という遺伝子を抽出し、間質性肺炎におけるGREM1の発現解析及び機 能解析を中心に行った。間質性肺炎の移植肺から樹立した初代培養肺線維芽細胞を用いて、増殖、収縮、ECM産生といった機能解析で一定の成果が挙げられたため、論文投稿準備中である。論文投稿の準備に時間を費やし、まだ肺癌との関連についての研究へ進められていないため、研究計画からはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
間質性肺炎におけるGremlin-1の役割に関する論文をまとめ、publicationを行う予定である。必要に応じて追加実験を検討する。 さらに今後は肺癌-癌関連線維芽細胞(CAF)相互作用におけるの役割に関する研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗がやや遅れたため。 論文投稿に伴う各種費用や必要な追加実験の費用、さらに成果発表のための学会出張費などに用いる。
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