今年度は昨年度に引き続き、EGFR L858R+T790M変異を持つ肺腺がんオルガノイドで、オシメルチニブを培養液中に添加し耐性化を試みた。肺がんオルガノイドは元々増殖が遅く、オシメルチニブを添加すると顕著に増殖抑制が引き起こされ、本研究期間内では薬剤耐性オルガノイドを作製するには至らなかった。また、PDXにおいてオシメルチニブによる治療により耐性化した腫瘍から樹立したオルガノイドを用いてSHOマウス(重度複合免疫不全ヘアレスマウス)皮下に移植した。今年度は昨年度よりさらに細胞数を増やしてSHOマウス(皮下に移植したが、生着しなかった。さらにこのオルガノイドを、生着率を上げるためにマトリゲルを使用してSHOマウス皮下に移植を試みたが、同様に生着しなかった。このオシメルチニブ耐性オルガノイドを用い、MET阻害薬、EGFR阻害薬との併用効果をin vitroで検証した。それぞれの単独群ではさほど増殖抑制効果は見られなかったが、阻害薬併用群では、40~50%ほどの増殖抑制が見られた。さらにオシメルチニブ耐性オルガノイドが新たな変異を獲得しているかどうか調べるためにDNAを抽出精製し、ホールゲノムシークエンスを行った。その結果、このオシメルチニブ耐性オルガノイドは、70~80%がマウス由来のDNAという解析結果であった。PDX腫瘍の時点では、HE染色にて手術検体と同様の組織像であったことを確認しており、オルガノイド樹立過程で混入したマウス由来の正常細胞あるいは腫瘍が優位になったと考えられる。このオルガノイドはPDX由来であることからマウス細胞混入は避けられないが、PDXからのオルガノイド樹立には相当な注意が必要である事が分かった。
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