研究課題
本研究の目的は、①慢性創傷の果て、つまり肺線維化という母地になぜ肺癌が発生するのか、②肺の細菌叢はその病態に関与しているのか、③線維化および発癌におけるMUC5Bの働きと、このムチンが細菌叢の変化維持に関与するのかなどを解明することを目的とし、④副次的には肺癌発症後の、癌周囲の微小環境の変化から、肺の線維化および発癌に対しての細菌叢の関与からの線維化制御方法および発癌抑制のseedsを見出す事である。我々の開発したヒトTGF-β1を肺に強制発現させた肺線維症マウスモデルでは、その経過中に肺の線維化とともに肺癌を発症することが判明しており、そのため、ヒトにおける肺線維化中の肺癌発症のメカニズム解析に適した世界初のマウスモデルとなっている。また、肺線維化および発癌に関与している可能性がある細菌叢を発見している。さらに、細菌叢から分泌される新規発見のペプチドをCorisinと命名し、これがアポトーシスを誘導することを発見した。この細菌叢から産生されるペプチドが線維化層の形成や発癌、癌の進行など病態に関与する可能性があり、細菌叢由来の物質に関し、それらを制御することが線維化及び発癌を抑制する可能性がある。我々は、この新規ペプチドへのポリクローナル抗体作成に成功し、続いてモノクローナル抗体の生成も成功した。これらの抗体を用いて、疾患抑制の可能性に関し研究を続行している。さらに、肺癌細胞を用い、この新規ペプチドで処理した後、KINEX抗体マイクロアレイによりリン酸化蛋白をスクリーニングし、活性化された細胞内シグナル経路からp53が強力に活性化されることが分かった。今後もこの研究を推し進めていく予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (3件)
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