研究課題/領域番号 |
21K08205
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
桑原 誠 愛媛大学, 医学系研究科, 講師 (00568214)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Bach2 / IL-7R / IL-33R+ Th2 / アレルギー性気道炎症 / 肺胞蛋白症 |
研究実績の概要 |
本申請研究の目的は、Bach2がT細胞分化・機能の調節を介して、肺の恒常性を維持し、呼吸器疾患の発症を制御していることを明らかにすることである。2021年度は、(1)Bach2の発現低下によるIL-33受容体陽性(IL-33R+) Th2細胞分化誘導とアレルギー性気道炎症発症制御の解明、(2)Bach2発現上昇によるPD1+ Treg分化誘導と肺胞蛋白症発症機構の解明について解析を行った。 (1)申請者らは、Bach2発現低下によるTh2細胞のIL-7受容体(IL-7R)の発現上昇がIL-33R+ Th2細胞の誘導に必要であることを見出している。そこで、Bach2によるIL-7/IL-7R下流シグナルの制御について解析を行った。IL-33R+ Th2細胞の誘導には、Bach2発現低下によるIL-7-mTORC1シグナルの活性化と、続く解糖系の促進が重要であることがわかった。さらに、Bach2によるIL-7依存的なStatの活性化制御が、IL-7-mTORC1-解糖系経路を調節し、IL-33R+ Th2細胞を誘導する可能性が示唆された。 (2)申請者らは、T細胞特異的Bach2ノックイン(KI)マウスでは肺胞蛋白症を発症すること、肺のPD-1+ Tregが増加することを見出している。Treg特異的Bach2 KIマウスを作製したところ、肺胞蛋白症の発症がT細胞特異的Bach2 KIマウスに比べて同等もしくは軽微であった。また、CD8T細胞特異的Bach2KIマウスでも肺胞蛋白症の発症を認めた。これらの結果から、Treg増加が肺胞蛋白症の直接の原因ではないことが示唆された。一方、肺のシングルセルRNA-seq.解析から、T細胞特異的Bach2 KI マウスで肺胞マクロファージが骨髄由来マクロファージに置き換わっている可能性が示され、肺胞蛋白症の発症に関与していることが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
T細胞のBach2発現低下によるIL-33R+ Th2細胞の誘導とアレルギー性気道炎症の解析は順調に進んでいる。特に、Bach2によるIL-7/IL-7Rシグナル下流のmTORC1-解糖系の活性化がIL-33R+ Th2細胞の誘導が重要であることがわかった。今後、Bach2によるIL-7/IL-7R下流シグナルの制御を明らかにする。また、T細胞のBach2発現増加による肺胞蛋白症の発症機構の解析も順調に進んでいる。特に、T細胞のBach2過剰発現が、肺胞マクロファージを骨髄由来マクロファージに置き換えてしまうことが、肺胞蛋白症の発症に関与することが示唆された。今後、T細胞の過剰発現による、肺胞マクロファージの骨髄由来マクロファージの置き換わりのメカニズムを明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度以降も上記(1)および(2)の解析を進める。具体的には、2021年度の成果をもとに、下記内容で研究を行う。 (1)Bach2がIL-7によるStatの活性化を制御している可能性がわかってきた。そこで、Bach2-IL-7経路で強く活性化されるStatを同定し、CRISPR/Cas9システムを用いて、IL-33R+ Th2細胞の誘導における役割を明らかにする。また、申請者らは低分子化合物SH-2251がIL-7依存的なIL-33R+ Th2細胞の誘導を阻害することを見出している。そこで、IL-7/IL-7Rシグナル下流に位置する、SH-2251の標的分子を同定し、IL-33R+ Th2細胞の誘導における役割を明らかにする。 (2)肺のシングルセルRNA-seq.解析から、T細胞特異的Bach2 KI マウスの肺胞マクロファージ分画が骨髄由来のマクロファージに置き換わっている可能性が示唆された。そこで、野生型およびT細胞特異的Bach2 KIマウスの肺T細胞および肺胞マクロファージのRNA-seq.解析を行う。この解析により、T細胞のBach2 で制御される液性因子が、肺胞マクロファージを骨髄由来のマクロファージに置き換えることで、肺胞蛋白症が発症するというメカニズを明らかにする。
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