研究課題/領域番号 |
21K08207
|
研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
長谷川 喜弘 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90643180)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | RANKL / 破骨細胞 / 肺胞マクロファージ / 肺炎 / ARDS |
研究実績の概要 |
肺炎の治療においては、適切な抗菌薬に加え、過剰な炎症を制御し急性呼吸急迫症候群 (ARDS) への移行を防ぐ補助療法が重要であるが、確立されたものはない。破骨細胞は骨吸収を担う多核巨細胞であり、破骨細胞分化誘導因子(RANKL)によって単球・マクロファージ系前駆細胞から分化する。申請者は最近、珪肺モデルマウスの肺内でRANKLが産生され、結果として破骨細胞様の多核巨細胞 (肺破骨細胞とする) が誘導されることを発見した。また、抗RANKL抗体を珪肺モデルマウスに投与すると、肺破骨細胞への分化を阻害されるだけでなく、急性炎症が抑制された。本研究では、「RANKLが単球・マクロファージ系前駆細胞を肺胞マクロファージではなく、肺破骨細胞へ分化誘導することで、肺炎を重症化させている」という仮説のもと、RANKLの阻害により肺胞マクロファージへの分化を促し、病原体のクリアランス向上や抗炎症につなげるという新しい肺炎治療を提唱することを目指す。 これまでに予備実験として作製した肺ヒストプラズマ症モデルマウスの肺内において、破骨細胞分化誘導因子(RANKL)の発現が増加していることを明らかにした。さらにその結果として、破骨細胞様の多核巨細胞が肺胞腔内に出現することを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
類似課題である肺線維症モデルマウスにおける肺破骨細胞の機能解析に時間を要し、細菌性モデルマウスを用いた検討を進めることができなかった。また、肺内に存在する破骨細胞様の多核巨細胞が酸やタンパク分解酵素の分泌能といった破骨細胞としての機能を有することを証明することを目指しているが、機能解析のためのアッセイ系の確立に難渋している。破骨細胞様多核巨細胞を疾患モデルマウスの肺組織から単離し、骨切片スライス上で培養することで、骨吸収能を評価することを試みているが条件設定に時間を要している。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、肺内のRANKLや肺破骨細胞、肺炎の重症度を評価するのに適した細菌性肺炎モデルマウスの作製方法を確立する。適切な肺炎モデルマウスが作製できた後は、抗RANKL抗体を腹腔内投与し、生存率、肺組織像、肺内菌量、血清CRP値、血清プロカルシトニン値を比較することで治療効果を判定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
類似課題の疾患モデルマウスの解析に時間を要し、本申請課題については予定よりも実験に必要な試薬の購入が少なくなった。次年度は遅れていた初代培養細胞を用いた実験と肺炎疾患モデルを用いた動物実験を進められるので、試薬購入に使用する予定である。
|