研究実績の概要 |
哺乳類の呼吸器系は、細菌やウィルスを取り除き空気を運ぶ気道と酸素を血液中に取り込む肺胞から成る。気道の内側は気道上皮細胞に覆われており、異物を捉える粘液を分泌する杯細胞を含む分泌細胞とそれらを排出する繊毛細胞から構成され、その下に気道上皮幹細胞である基底細胞が存在する、偽重層上皮構造を有する。一方、気道の外側は軟骨と平滑筋が組み合わさり、管の強度を保つと同時に管の太さを調節可能な構造になっている。令和3年度に腹側と背側の気道上皮幹細胞においてその遺伝子発現に大きな相違があることについて国際学術誌に発表を行い、気道の発生や維持機構に気道上皮幹細胞のヘテロジェネイティが果たす役割を示唆した(Tadokoro et al., Biol Open, 2021)。本年度はゲノム編集技術を使用した遺伝子改変floxマウスの系統拡大維持(理化学研究所との共同研究)、Shh-Creマウスとの掛け合わせによるコンディショナルノックアウトマウスを作製し、先の論文で抽出された遺伝子を気道上皮特異的にノックアウトすることによって、気道の形成、特に気道軟骨や気道平滑筋形成にどのような影響を与えるかについて検討を行った。その結果、気道上皮細胞特異的な特定の遺伝子ノックアウトマウスにおいて、気道軟骨の形成不全が認められた。平滑筋の形成については、形態上大きな変化は認められなかった。以上より、上皮-間葉相互作用による気道形成メカニズムの一端を明らかにすることができた。
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