研究課題/領域番号 |
21K08210
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
矢澤 華子 (佐藤華子) 獨協医科大学, 医学部, 講師 (60438132)
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研究分担者 |
矢澤 卓也 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50251054)
柏木 維人 獨協医科大学, 医学部, 助教 (50722451)
石井 順 獨協医科大学, 医学部, 助教 (80749599)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺癌 / 腺癌 / 希少肺腺癌 / 分化 |
研究実績の概要 |
肺に発生する悪性腫瘍は多彩であり、高悪性度胎児型肺腺癌や腸型肺腺癌、肝型肺腺癌など多くの組織型が希少癌として存在するが、それらには少なからず通常型肺腺癌成分が含まれている。この事実は希少組織型肺腺癌細胞が通常型肺腺癌細胞から形質転換により発生する可能性を示唆している。今日の分子標的治療やがんゲノム医療の進歩は、腫瘍発生進展に深く関与するドライバー遺伝子の発見を基盤としており、中でも肺腺癌における分子標的治療は最も進歩している分野である。しかし希少組織型肺腺癌においては既知のドライバー遺伝子変異の頻度が低く腫瘍発生機序が不明であるため、分子標的治療が困難な状況にある。そこで本研究では、種々の分化誘導遺伝子を通常組織型に由来する肺腺癌細胞に導入あるいは編集することにより希少組織型肺腺癌細胞への形質転換を試み、その組織発生機序を明らかにしていくこととした。本年度は、3種の目的遺伝子(CDX2, CDX1, SALL4)を発現するKRAS変異腺癌株およびEGFR変異腺癌株を樹立し、SCIDマウス皮下に形成された移植腫瘍について病理組織学的に検討した。その結果、目的遺伝子を遺伝子導入した細胞株において著しい形質転換像は認められなかった。そこで次に、分化脆弱性、幼若性を獲得した状態の通常型肺腺癌株に対し転写因子遺伝子を単独あるいは共導入することによる形質転換状態を検討するため、まずCRISPR Cas9システムを用いてTP53遺伝子をノックアウトした細胞株の樹立を試みた。樹立したTP53ノックアウト細胞株の上皮間葉転換(EMT)状態について確認したところ、TP53ノックアウトにより複数のEMT関連遺伝子の発現誘導が確認された。今後はこれらのTP53ノックアウト株に対し上記目的遺伝子を導入し、腸上皮分化、肝細胞分化がどの程度惹起されるかについて検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに樹立した複数の腺癌細胞株をSCIDマウスに移植し、その病理組織形態像について解析できたとともに、新たにTP53遺伝子のノックアウト細胞株を樹立することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
樹立したTP53ノックアウト細胞株に対し、3種の目的遺伝子(CDX2, CDX1, SALL4)を遺伝子導入し、腸上皮分化、肝細胞分化がどの程度惹起されるかについて検討するとともに、検索対象である遺伝子の相互作用の有無について引き続き検索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費の値引きにより次年度使用額が生じた。翌年度分として請求した助成金と併せ、物品費の購入などに充当する。
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