研究実績の概要 |
初年度から報告しているが、放射線の肺胞上皮細胞単独への照射のみでは、バリア機能障害の程度が軽度であり、そのメカニズムとグルココルチコイドの効果を検討することが困難であり、TNFaによるバリア機能障害モデルで引き続き検討した。TNFaはラット肺胞上皮細胞のバリア機能を障害し、グルココルチコイドは、tight junction 関連蛋白であるZO-1の分布を細胞間間隙に集簇させるが、その機序はmyosine light chain kinase (MLCK)の発現をグルココルチコイドが抑制することでmyosine light chain (MLC)のリン酸化を抑制させることが昨年度までに分かったため、今年度は、論文にまとめPLOS ONEに発表することができた(Kutsuzawa N. Ito Y., et al., PLoS One. 2023 Dec 27;18(12):e0295684. PMID: 38150443)。 肺胞上皮細胞傷害治癒モデルに関しては、グルココルチコイドが創傷治癒を遷延させることを証明したが、そのメカニズムの検討に難航していた。今年度も以前施行したmicroarrayのデータから候補因子のいくつかのリコンビナント蛋白で創傷治癒の改善があるか検討したがいずれもnegative dataであった。しかし、過去に皮膚の創傷治癒遷延を改善させることが報告されているcaveolin-1が、肺胞上皮細胞でもグルココルチコイドにより発現が亢進し、グルココルチコイド受容体を介する経路で制御されていることが今年度末になって判明してきたため、今後も引き続き検討していきたい。
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