COPD、IPFはともに加齢関連呼吸器疾患であり、不十分なオートファジー分解及び細胞老化の亢進が病態に関与すると考えられている。今回我々は、オートファジー・リソソーム系制御の中心的な調節転写因子であるTFEBの役割に注目し、その誘導作用を持つ可能性のあるSPPARMαであるpemafibrateを用いた検討を行った。 pemafibrateは、COPDモデルマウス、IPFモデルマウスの両方で、病態進展抑制効果を示した。特にCOPDモデルマウスにおいては、細胞老化の抑制作用を認め、TFEB発現増加によるオートファジー・マイトファジーの亢進が関与する可能性が示唆された。 培養細胞を用いた詳細な検討から、喫煙刺激で活性化されるTFEBは、オートファジー・マイトファジー活性化に重要であることが示された。pemafibrateは、TFEB発現増強によるオートファジー・マイトファジー活性化を介して抗老化作用を示すことが明らかとなった。つまり本研究結果からはPPARαmodulatorが高脂血症治療薬としてだけはではなく、COPDに対する新規の抗細胞老化治療となりうる可能性が示されたと考えている。今後は呼吸器疾患治療薬として、吸入療法など、肺局所療法の開発が重要な課題となる。 しかしながら、PPARα活性化薬にもFGF21を介する作用など様々な機序も存在し、TFEB以外の作用機序解明も今後の検討課題である。さらにIPFモデルでも抗線維化作用を認めたが、その作用機序に関しては明らかでなく、今後詳細な検討が必要であると考えている。 最終年度はこれまでの研究成果を論文化し、学会発表とともに論文化も行い、投稿中である。
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