研究課題
本研究では、進行する肺の線維化を制御するセカンドメッセンジャーとしてミトコンドリアDNA(mtDNA)に着目し、鉄代謝によるmtDNAの細胞外放出メカニズムと線維化について検討し、臨床応用への研究基盤を確立することを目的としている。具体的には、①タバコ煙暴露によるmtDNA放出と鉄代謝の関係、②鉄代謝とmtDNAによる肺線維化の制御機構、③血中mtDNAの線維化バイオマーカーの可能性について検討を行う。初年度は、主に①タバコ煙暴露によるmtDNA放出と鉄代謝の関係を解明するためのin vitroの検討を行った。タバコ煙抽出液処理により肺上皮細胞株Beas 2B細胞内でmtDNAがミトコンドリアから細胞質に処理後3時間をピークに移行した。さらにmtDNAは細胞外にタバコ煙抽出液処理後15時間をピークに放出されることを確認した。これらの結果は、タバコ煙が、mtDNAの細胞外放出を、ミトコンドリアから細胞質、細胞質から細胞外の2つのステップで促進することを示唆している。また、鉄キレート剤DFO (Deferoxamine)存在下では、Beas 2B細胞におけるタバコ煙抽出液によるmtDNAの細胞外放出は抑制され、鉄代謝がmtDNAの細胞外放出を制御していることが示唆された。これらの結果は、タバコ煙は肺上皮細胞においてmtDNAをミトコンドリアから細胞質を経て細胞外に放出するが、その過程を鉄代謝を制御していることを示した新しい知見である。次年度は、②鉄代謝とmtDNAによる肺線維化の制御機構を解明を進める。具体的には、ブレオマイシン肺線維症モデルに鉄キレート剤DFOを投与し、肺の線維化評価を行う。また、マウスの血中および気管支洗浄液中のmtDNAを測定して、線維化との相関を解析する予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、研究期間内に、①タバコ煙暴露によるmtDNA放出と鉄代謝の関係、②鉄代謝とmtDNAによる肺線維化の制御機構、③血中mtDNAの線維化バイオマーカーの可能性について検討することを目的としている。初年度は、主に①タバコ煙暴露によるmtDNA放出と鉄代謝の関係を解明に取り組んだ。in vitroにおいて、タバコ煙抽出液処理により肺上皮細胞株Beas 2B細胞内でmtDNAがミトコンドリアから細胞質に処理後3時間をピークに放出され、さらにmtDNAは細胞外にタバコ煙抽出液処理後15時間をピークに放出されることを確認した。また鉄キレート剤DFO (Deferoxamine)存在下では、Beas 2B細胞におけるタバコ煙抽出液によるmtDNAの放出は抑制された。以上の結果は、鉄代謝はタバコ煙によるミトコンドリアから細胞外へのmtDNA放出を制御していることを示唆しており、タバコ煙暴露によるmtDNA放出と鉄代謝の関係を明らかにしたものであり、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
初年度に得た研究成果を元に、鉄代謝とmtDNAによる肺線維化の制御機構の解明を進めていく予定である。具体的には、ブレオマイシン肺線維症モデルに鉄キレート剤DFOを投与し、肺の線維化評価のために、組織学的にはHE染色した切片を用い、肺線維化スコアであるAshcroftスコアで肉眼的に線維化所見を定量化し、生化学的には、線維化の指標となる細胞外マトリックス構成コラーゲン成分のヒドロキシプロリン量を測定する。また、マウスの血中および気管支洗浄液中のmtDNAを測定して、線維化との相関を解析する予定である。
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Frontiers in Pharmacology
巻: 12 ページ: 643980
10.3389/fphar.2021.643980