研究成果の概要 |
本研究では, 肺の線維化を制御するセカンドメッセンジャーとしてmtDNAに着目し, 鉄代謝によるmtDNAの細胞外放出メカニズムと線維化について解明することを目的とした. 本研究で, 鉄代謝経路が, タバコ煙によるmtDNAの肺胞上皮細胞外への放出を制御していることが示された. 細胞外に放出されたmtDNAは肺胞上皮細胞に作用し, 肺線維症の病態に重要なIL-6やIL-8の産生を増強する. 生体内においては, 鉄代謝経路が肺の線維化を制御していることが示唆された. これらの結果により, タバコ煙によるmtDNA放出を介した肺の線維化を, 鉄代謝経路が制御するメカニズムが明らかとなった.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
特発性肺線維症は肺の線維化を特徴とし, 予後不良であるが, 治療法は限られている. 本研究は, 肺線維化の新たなメカニズムとして鉄代謝とmtDNAに着目し, 診断と治療応用への研究基盤を確立することを目的とした. 本研究により, タバコ煙によるmtDNA放出を介した肺の線維化を, 鉄代謝経路が制御するメカニズムが明らかとなった. 肺線維症の病態形成において, mtDNAの細胞外放出が肺の線維化に関わり, 鉄代謝がその病態生理に中心的な役割を果たしている考えられ, 鉄代謝経路の制御は, 新たな特発性肺線維症の治療薬やバイオマーカーの開発につながる可能性がある.
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