研究課題/領域番号 |
21K08215
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
風間 智彦 日本大学, 医学部, 助教 (80525668)
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研究分担者 |
水村 賢司 日本大学, 医学部, 兼任講師 (20761688)
松本 太郎 日本大学, 医学部, 教授 (50366580)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脱分化脂肪細胞 / DFAT / 特発性肺線維症 / 成熟脂肪細胞 / 間葉系幹細胞 / 脂肪組織由来幹細胞 / マクロファージ / 脱分化 |
研究実績の概要 |
本研究では、難治性かつ治療法が乏しい特発性肺線維症(IPF)に対する脱分化脂肪細胞(DFAT)の治療効果を明らかにする目的で、肺線維症モデルマウスに対するDFAT静脈内投与による治療効果を検討するとともに、単球/マクロファージの可塑性に対するヒトDFATの影響を明らかにする。本年度において、C57BL/6マウスに対してブレオマイシン(BLM)を経気道投与して作製した肺線維症モデルにPKH26蛍光色素で標識したC57BL/6マウス由来DFAT(マウスDFAT)を尾静脈より投与した。細胞投与3週間後のマウスより肺組織を摘出し、組織切片を作製後、蛍光顕微鏡下にて観察したところ、肺組織へのマウスDFATの生着は確認できなかった。また、陰性対照群としてのC57BL/6マウス線維芽細胞(マウスfibloblast)を移植した群においても肺組織への生着は認められなかった。次に、摘出した肺組織の組織切片をHE染色し、Ashcroftスコアにより線維化所見を定量化した結果、マウスDFAT移植群において線維化が抑制されている所見が得られた。また、細胞投与3週間後のマウスより気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、BALF中の総細胞数、リンパ球、マクロファージならびに好中球の細胞数を測定した結果、マウスDFAT移植群において総細胞数、リンパ球ならびにマクロファージが陰性対照群である生理食塩水群ならびにマウスfibloblast群と比較して減少していた。そして、細胞投与3週間後のマウスより摘出された肺組織よりヒドロキシプロリンアッセイによりコラーゲン量を定量化した結果、マウスDFAT群において陰性対照群である生理食塩水群ならびにマウスfibloblast群と比較してコラーゲン産生量が減少傾向にあることを明らかにした。これらの結果より、マウスDFAT移植群において肺の線維化が抑制されていると推察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度において、肺線維症モデルマウスに対するDFAT移植による治療効果を明確にする目的で、C57BL/6マウスに対してBLMを経気道投与して作製した肺線維症モデルにマウスDFATを尾静脈より投与し、肺線維症に対する有効性を確認する予定であった。当初の予定通り実験計画を遂行することができ、C57BL/6マウスに対してBLMを経気道投与して作製した肺線維症モデルにPKH26蛍光色素で標識したマウスDFATを尾静脈より投与した。しかしながら、細胞投与3週間後のマウスより肺組織を摘出し、組織切片を作製後、蛍光顕微鏡下にて観察したところ、肺組織におけるマウスDFATや陰性対照群としてのマウスfibloblastの生着は確認できなかった。また、摘出した肺組織より作製した組織切片をHE染色し、肺線維化スコアであるAshcroftスコアで肉眼的に線維化所見を定量化した結果、マウスDFAT移植群において線維化が抑制されている所見が得られた。次に、細胞投与3週間後のマウスより採取したBALF中の総細胞数、リンパ球、マクロファージならびに好中球の細胞数を測定した結果、マウスDFAT移植群において総細胞数、リンパ球ならびにマクロファージが陰性対照群である生理食塩水群ならびにマウスfibloblast群と比較して減少していることを明らかにした。そして、細胞投与3週間後のマウスより摘出された肺組織よりヒドロキシプロリンアッセイによりコラーゲン量を定量化した結果、マウスDFAT群において陰性対照群である生理食塩水群ならびにマウスfibloblast群と比較してコラーゲン産生量が減少傾向にあることを明らかにした。これらの結果より、マウスDFAT移植群のマウスにおいて肺線維症が抑制されていることを推察できる結果が得られたことから、現在の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度においては、マウスDFATにおける肺線維症モデルマウスの肺線維症に対する有効性を示せたことより、C57BL/6マウスに対しBLMを経気道投与して作製した肺線維症モデルを作製し、臨床グレードにて調製したヒトDFATを尾静脈注射で投与する。細胞投与後、肺組織を摘出し、組織切片作成後にHE染色を行ない、Ashcroftスコアを用いて線維化所見を定量化する。同様に、細胞投与後の肺組織にてヒドロキシプロリンアッセイによりコラーゲン量を定量化する。そして、摘出した肺組織よりmRNAとタンパク質を抽出し、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-10、IL-2、IL-6、TNF-α、MIF)ならびに線維性サイトカイン(TGF-β、INF-γ)の発現量をリアルタイムPCRにて解析し、ELISA法にてTGF-βの発現解析を行い、TGF-β活性化の指標となるsmadのリン酸化をウェスタンブロット法により評価する。また、ヒト単球由来細胞株THP-1を、①PMA刺激によりマクロファージ様細胞へ分化誘導、②LPSとINF-γ刺激によりM1マクロファージへ分化誘導、③IL-4刺激によりM2マクロファージへ分化誘導したものを、それぞれヒトDFATとトランスウェルを用いた非接触型共培養を行なう。共培養後、①~③における炎症性サイトカイン(IL-6、IL-12、TNFα)やM2マクロファージで高発現するDC-SIGN、TGM2、IL-10、TGF-β1をリアルタイムPCRやELISA法にて解析する。
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