研究課題/領域番号 |
21K08216
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
今泉 和良 藤田医科大学, 医学部, 教授 (50362257)
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研究分担者 |
寺本 篤司 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (00513780)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 深層学習 / びまん性肺疾患 / 共焦点レーザー顕微鏡 / 呼吸器内視鏡 |
研究実績の概要 |
末梢肺組織の自家蛍光を直接観察でき、肺の任意の場所に挿入して肺組織の微細所見を得ることができるプローブ型共焦点顕微鏡プローブ (pCLE) 画像を利用して、usual interstitial pneumonia (UIP)とそれ以外の病型を鑑別することを目的に研究を開始した。この技術では肺胞壁・血管壁に分布するエラスチン分子の自家蛍光を利用して観察することで浸襲的な病理検査を行わずに末梢肺組織の微細構造を、光学顕微鏡における約1,000倍の倍率に等しい画像として観察できる。本研究では動画撮影された画像を多数の静止画として取り込み、convolutional neural networkを用いた深層学習によってpCLE像に基づいてUIPを識別させることを目的として研究を進めている。これまで約10年の間質性肺炎症例蓄積をあらためて整理・解析し、学習サンプルとして臨床、画像、病理、予後データの揃った特発性肺線維症-UIP、fibrotic non-specific interstitial pneumonia (fNSIP)、器質化肺炎確定例の症例群のデータを用い、機械学習を行う。研究の早い段階でまずCT画像でも典型的な所見を示すUIPとfNSIPについて動画データから静止画データを抽出し機械学習に用いる。その後、新たに間質性肺炎の画像・病理診断を行う症例でpCLE像の機械判定によるUIP診断の正確性を、臨床・画像・病理の統合的検討による診断と一致するかどうかで前向きに検討する。総合的に本研究ではびまん性肺疾患の内視鏡によるリアルタイム病理診断の確立を目指すことを目的としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず学習データとして気管支鏡下にpCLE画像を撮像したUIP 3症例とfNSIP 3症例の動画データを多数の静止画として解析に用いた。これらの画像をテクスチャ解析と機械学習法を用いて解析し、鑑別の正解率について初期検討を行なった。解析では74種類の画像特徴量が抽出され、これを識別器に入力し機械学習を行なった。機械学習法としてNaive Bayes法を用いた。初期評価では、個々の画像ベースの鑑別については64.7%の識別正解率であり、症例ベースでは3例中それぞれ2例を正しく識別(67%)した。この初期学習の結果ではAIによる機械学習を用いたpCLE画像からの間質性肺炎病型鑑別は十分に検討可能であるが、今後より多くの症例で学習を繰り返すことでpCLE像からの病型診断の精度を高めることが期待できた。一方で問題点もいくつか明らかになった。鑑別を進めるのに使用するデータが個体の病態を正確に反映していない場合、診断が全く真逆になることがあり、画像取得の部位、時間、病期によって結果が異なることが予想される。データ採取の標準化が重要であることも考えられる。これらの成果の一部は2023年1月の画像イメージング研究会(札幌)で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、これまでアーカイブとして動画データ保存した症例の内、進行性線維化間質性肺炎PPFと判断できる症例に対して臨床データを最新状況に更新した上で、validation cohortとして利用し、再度pCLE像のA I解析を行う。改めて病理、画像、臨床のmulti-disciplinary discussion による診断(MDD診断)を行った上で、治療反応や経過と合わせて、予後不良である典型的な特発性肺線維症(IPF/UIP)症例を確実に抽出する。具体的には肺機能(FVCおよびDLCO)の経時的低下や症状の進行など画像の悪化、および病理検査のから経過も踏まえた臨床事項を加味したMDDで改めて病型診断(IPF/UIPとそれ以外の慢性線維化を呈する間質性肺炎)を行った症例でpCLE画像についてNaive Bayes法を用いたA I解析を行い鑑別診断を施行する。これによりAIによるpCLE画像読影がIPF/UIPを正確に抽出する率(診断率)を改めて評価することができる。ここで抽出されたIPF/UIP症例でのpCLE動画と、それ以外の進行性線維化間質性肺炎(PPF)におけるpCLE動画をvalidation用のデータとして、上述したNaive Bayes法を用いたA I解析を行いIPF/UIP とそれ以外のIIPを判別できるかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に研究で使用しする顕微鏡プローブを追加購入する予定で画像解析のソフトウェアなどの予算と合わせて使用したいと考えています。
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