研究課題/領域番号 |
21K08220
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山縣 邦弘 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90312850)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 透析導入コホート / Calciprotein particles / FGF23 / Nephron index / 腎硬化症 |
研究実績の概要 |
初年度は、当初計画に則りヒト検体を用いた検討を中心に実施した。茨城県の主要病院の透析導入患者コホートであるiDIC研究(文献1)登録患者636名中保存検体の確保できた307名について血中CPP濃度、FGF-23濃度等を測定し原疾患、合併症、予後との関係を検討した。 透析導入直前の血清CPP濃度は194*103AU(SD78)、logFGF23は6.79 pg/ml (SD1.28)であり、透析導入時血清クレアチニン値 9.38mg/dl(SD3.0), eGFR5.44ml/min/1.73m2(SD1.85), Nephron index4.1(SD5.5)であった。これらを原疾患別に検討すると、対象の透析導入時平均年令67歳(SD13)で、全体の74.6%が60歳以上であり、透析導入時eGFRを除き、原疾患間での差は認められなかった。透析導入後2年以内、5年以内の死亡患者はいずれも導入時eGFRが有意に高く、CPPは有意に低値であった。透析導入後2年間での心臓血管病(MACE)に起因しての入院の有無は透析導入時eGFRが入院有6.23ml/min/1.73m2(SD1.88)、入院無5.37ml/min/1.73m2(SD1.83)、CPP濃度は入院有211*103AU(SD69)、入院無192*103AU(SD79)でeGFRは有意に入院有群で高値であったものの、CPPについては入院群で高値になったものの有意差はなかった。糸球体ネフロン数を推定するNephron indexは透析導入後2,5年以内の生死、MACE入院の有無で差は無かった。 以上の結果から当初予想したCPP高値例において血管平滑筋の増殖、動脈硬化病変の進展のために透析導入後の生命予後、心臓血管病による入院増は明らかでなかった。 そこでANSマウスを用いての動物実験の準備を開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
茨城透析導入コホートの当初2年の予後を含めた結果をBMC Nephrology (2022) 23:104にて論文化することができた。この中で血液、尿検体が揃った307例について血中CPP濃度(ゲル濾過法)、FGF-23濃度(ELISA)、血清、尿中リン濃度、クレアチニン濃度を測定し、臨床例におけるCPPの位置づけを検討した。その結果血清CPPについては年代別では40-60歳の壮年期が有意差はないものの高値で、透析導入原疾患による差が無いことを確認した。CPP値が血中リン濃度の変動により大きな影響を受けることから、臨床例での検討では、腎機能のみならず、食事、リン吸着薬、ビタミンD製剤等の影響も大きく、内因性の炎症の評価を含めた詳細な検討は難しく、動物実験へ移行して更なる検討をすることとした。臨床の結果についてはここまでの結果を用いてまとめる予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
高血圧惹起から蛋白尿出現時点までの経時的なCPP変化ならびに尿中CPPと蛋白尿の変化、腎糸球体でのミトコンドリア機能、ポドサイトのmtDNA変化、FSGS病変をserialな変化をリン負荷食の有無により比較するために検討を開始している。マウスリン負荷食の内容については既に既報の結果を用いて確立した。ANSマウスについては、CPPの経時的変化確認のため、長期の負荷を行う慢性型の疾患モデルを構築予定であり、このための予備実験を行っている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の検査項目について、消耗品の大半を既存の物品によりまかなえたため出費を抑制することができた。来年度は、動物飼育ならびに特殊飼料を要する研究が必要で、新たに購入する消耗品が増加することが予想される。
|