炎症性腎疾患の急性期・活動期に暴走する骨髄系細胞のうち特に好中球が果たす病態への寄与及び治療可能性を探求することを目的とした.研究の焦点を細胞内において免疫機能に影響を与える RNA センサー蛋白にあて,その過剰応答が生体特に腎臓,腹腔,皮膚等の体内複数の臓器・器官・部位に与える影響を解析した.実際,外来微生物のオプソナイズ化や免疫複合体を想定した IgG によって,複数の RNA センサー蛋白が活性化(リン酸化)されることがわかった.また,その下流にも既報で知られる種々のリン酸化カスケードが存在していること,また,リン酸化アレイを用いることで新規のリン酸化酵素が含まれることも明らかにした.そして,これらリン酸化酵素の活性化は最終的に,好中球がもつ細胞生物学特性,すなわち,呼吸性バーストや脱顆粒,細胞外 DNA トラップ,血管内皮接着,血管外遊走の各作用に影響することが分かった.これらは外来微生物はもちろん,自己組織に対しても攻撃的な側面をもち,特に免疫複合体を起点とする自己免疫疾患の分子基盤を説明しうると同時に,創薬標的ともなりえる.また,上述の脱顆粒や血管内皮接着,血管外遊走等は,好中球の細胞骨格の変形が重要であり,果たして,今回注目されたリン酸化酵素の活性化は Rho ファミリー低分子量 G タンパク質をはじめとする細胞骨格関連タンパクを下流シグナルに従えることも明らかとなった.
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