研究課題
慢性腎臓病(CKD)では原疾患によらず線維化が進行するが、その機序は未解明な点が多い。腎線維化を生じる遺伝性疾患では、同じ遺伝子変異を有していても重症度の個人差が大きいことから、線維化の重症度に強い影響を与える別の修飾遺伝子の存在が疑われる。本研究では、腎臓オルガノイドを用いた網羅的なforward geneticsによって、このような腎線維化修飾遺伝子の同定を目指している。令和3年度には、線維化レポーター機能を持つ腎臓オルガノイドの作製を行った。腎線維化を可視化するため、レンチウイルスベクターによるα-SMA/fibronectinプロモーターでGFP蛍光発色するレポーターを我々は最近作製していた。このレポーターを健常者由来iPS細胞に導入し、腎臓オルガノイドへと分化誘導した。また、修飾遺伝子はそれ単独で線維化を起こすわけではないため、何らかの因子により容易に線維化を起こすような背景を持つ「易線維化腎臓オルガノイドモデル」が必要となる。令和3年度にはこの易線維化腎臓オルガノイドモデルの構築も進めた。我々は易線維化背景としてNPHP1の変異に着目しており、これを腎臓オルガノイドに導入するため、CRISPR-Cas9システムを利用して、NPHP1欠損iPS細胞の作製を行った(In Vitro Cellular & Developmental Biology - Animal, 2022)。また、別の易線維化モデルとして、各種線維化誘発サイトカインにより健常者由来腎臓オルガノイドを線維化させる条件検討を行った。
3: やや遅れている
研究課題の多くは予定通り進捗している状況であるが、線維化レポーターの開発の部分はまだ終了していない。線維化レポーターとして、レンチウイルスベクターによりfibronectin/α-SMAプロモーターで蛍光発色するレポーターを作製したが、性能を検証したところやや不十分であり、改良を検討している。また、I型コラーゲンプロモーターで蛍光発色するレポーターはまだ完成しておらず、現在作製を進めているところである。
腎臓オルガノイドを用いた、線維化修飾遺伝子候補を選定する新規スクリーニング法を開発する。良好な線維化レポーターを搭載した易線維化腎臓オルガノイドモデルに対し、線維化を亢進させるような修飾遺伝子を探索するスクリーニングを進めていく。スクリーニングにより候補となる修飾遺伝子が絞り込めたら、その候補遺伝子が真の線維化増悪因子であるかどうかを検証する。健常者由来iPS細胞に対して候補遺伝子を改変を行い、線維化誘発刺激を加えてみて、control群と比較し確かに線維化の亢進が生じるかを確認する。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
In Vitro Cellular & Developmental Biology - Animal
巻: 58 ページ: 85-95
10.1007/s11626-022-00655-0