研究実績の概要 |
糖尿病性腎臓病は慢性透析に至る最大の原因疾患である。血糖、血圧のコントロールなどが加療の中心となり、根本的な治療は未だ存在しない。近年、腸管環境と各全身臓器の連関が多く報告されている。主に腸内細菌叢のdysbiosisが、種々の疾患を発症させることが判明しており、我々も進行性障害の病態における腸内細菌叢の意義を報告した(Nakade, Iwata et al. JCI Insight 2018)。本検討においては、腸内細菌叢の変化と、それに直に接する腸管上皮細胞に着目し、特に自然免疫の観点から検討する。腸管上皮細胞は自然免疫などにより細菌と対峙するとともに、その代謝産物を吸収し、共存することで恒常性を保持している。この恒常性の破綻が、全身臓器障害に関わっていることが報告されているが、糖尿病性腎症において詳細は不明である。そこで、本研究課題においては、糖尿病性腎症における、腸内環境の関与を検討することを目的とした。その結果、尿病性腎症の進展において、腸内細菌であるK. oxytocaが体内移入し、病態に関与することを見出した。糖尿病の発症に伴い、腸管上皮の脆弱性が惹起され、腸内細菌が腎臓に移行した。腸管上皮脆弱性モデルでは、侵入細菌の増加、血中IL-17増加を背景に腎障害が増悪した。腸内細菌による直接的な腎尿細管障害に加え、血中、腎内IL-17上昇による腎細胞障害などにより、糖尿病性腎臓病が進行することを明らかとした。
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