研究課題
糖尿病性腎症は不可逆的な糸球体の障害により、蛋白尿を呈した段階からほぼ確実に慢性腎不全に至ることが知られており、現在の医学では完治できない病気である。ゼブラフィッシュのネフロンは哺乳類動物と同様の組織学的特徴を持っており、ヒト腎障害や腎臓再生研究の実験動物として注目されている。本研究の目的は、ゼブラフィッシュ糖尿病性腎症モデル動物を用いて、腎症治療標的遺伝子の探索を行うことである。初年度は、トランスクリプトーム解析により同定した糖尿病性腎症に関連する治療標的遺伝子について、ゼブラフィッシュを用いて10種類のノックアウト系統を構築した。翌年度には、各標的遺伝子ノックアウト系統に対し、3カ月の過剰給餌による糖尿病性腎症の誘導を行い、経時的に蛋白尿を測定し、腎症コントロール個体と比較して蛋白尿の改善を検証した。また、腎臓の病理切片を作製し、足細胞障害や基底膜の厚さなどの糸球体病変を評価し、糖尿病性腎症に治療効果を示す標的遺伝子の探索や順位つけを行った。本年度の研究では、ヒト腎糸球体足細胞株を用いて、CRISPR/Cas9技術により上位6つ標的遺伝子のノックアウト株を作製した。次に、グルコース負荷により足細胞損傷を誘導し、各ノックアウト細胞株の形態観察を行い、足細胞の損傷を耐える細胞株を選別した。最終的にゼブラフィッシュとヒト腎症に対する治療効果がある遺伝子を共通して3つ発見し、今後の慢性腎疾患の治療薬開発に貢献することが期待される。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 4件)
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