慢性腎臓病(CKD)患者は心血管病の合併率が高く、特に心不全の管理が重要である。近年、リン尿ホルモンであるFGF23がCKDの進行とともに血中濃度が上昇し、CKD患者の心肥大に影響することが示唆されている。その機序は不明な点が多く、CKD患者の予後改善のため、心肥大の予防は重要な課題である。 本研究において、CKDによって血中に蓄積するインドキシル硫酸が、FGF23の上昇に影響し、心肥大を増悪させる可能性について検討した。 ラット心筋細胞H9c2細胞に対して、FGF23蛋白を50ng/dLおよび100ng/mL投与したところ、心肥大マーカーおよび線維化マーカーの発現上昇を認めた。同様に、H9c2細胞に対して、インドキシル硫酸を0.25mMおよび1.0mM投与したところ、心肥大マーカーおよび線維化マーカー、さらに、FGF23の発現上昇を認めた。さらに、インドキシル硫酸は、心筋細胞においてFGF23の分解を抑制するGLANT3を上昇させることが明らかとなり、この機序で血中のFGF23の蛋白が増加することが明らかになった。 また、マウスに片腎摘出を行い軽度腎障害を惹起し、インドキシル硫酸を投与したところ、インドキシル硫酸により心筋肥大が起こることを確認した。この肥大した心筋にはFGF23蛋白の発現上昇を認めた。これらの結果より、CKD患者において蓄積したインドキシル硫酸がFGF23を上昇し心筋肥大に影響する可能性が示唆された。このマウスモデルにおいて、FGF23の受容体であるFGFR4の阻害薬を投与したところ、インドキシル硫酸で起こった心筋肥大を抑制することができた。このことから、インドキル硫酸は、心筋におけるFGF23-FGFR4のシグナルを介して心筋肥大を引き起こすことが明らかにされた。
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