研究課題/領域番号 |
21K08233
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
森下 義幸 自治医科大学, 医学部, 教授 (30570494)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | マイクロRNA / IgA腎症 / バイオマーカー / 遺伝子治療法 |
研究実績の概要 |
マイクロアレイ法による25週齢のIgA腎症モデルマウス(HIGAマウス)腎(n=4)でコントロールマウス腎(n=4)と比較して、統計学的に有意に2倍以上上昇しているmiRNA 11種類、0.5倍以下に低下しているmiRNA 95種類、合計106種類のmiRNAを1,880種類の中からスクリーニング選出していた予備実験の結果をqRT-PCRで検証し、HIGAマウス腎臓で有意に変化しているmiRNAがあることを検証した。次に、血液で測定できるIgA腎症バイオマーカーを同定する目的で、25週齢のHIGAマウスの血漿(n=4)でコントロールマウスの血漿(n=4)と比較して有意に変化しているmiRNAをマイクロアレイ法により網羅的に抽出した。その結果、HIGAマウスの血漿での有意に上昇または低下しているmiRNAを合計60種類同定した。その後、データベースリサーチから同定した60種類のmiRNAの中で、ヒトで発現のないmiRNA、過去に既に報告されているmiRNAを除外したところ、HIGAマウスで有意に上昇しているmiRNA 5種、低下するmiRNA 3種を選出した。次にマイクロアレイ法で検出したmiRNAのHIGAマウス血漿での変化をqRT-PCR法で検証した。これら8種類のmiRNAのうちHIGAマウスの腎臓で有意に変化するmiRNAと一致するものは同定できなかった。さらにこれら8種類のmiRNAの発現変化を、糖尿病性腎症モデルマウス(db/dbマウス、AKITAマウス)、急性腎障害モデルマウス(リポポリサッカロイド誘導敗血症モデル、腎動脈虚血再灌流モデル)、腎線維化モデルマウス(片側尿管結紮モデル)、老化腎障害モデル(SAPM1モデルマウス)の血漿を用いてqRT-PCR法で比較検討し、HIGAマウスの血漿で特異的に変化するmiRNAを同定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IgA腎症モデルマウスの血漿でコントロールマウスと比較して有意に変化するmiRNAをマイクロアレイ法による網羅的検索で選出後、qRT-PCR法で検証できたことは予定どおりである。またそれらのmiRNAの変化の特異性を、糖尿病性腎症モデルマウス(db/dbマウス、AKITAマウス)、急性腎障害モデルマウス(リポポリサッカロイド誘導敗血症モデル、腎動脈虚血再灌流モデル)、腎線維化モデルマウス(片側尿管結紮モデル)、老化腎障害モデル(SAPM1モデルマウス)の血漿を用いてqRT-PCR法で比較検討し、IgA腎症マウスの血漿で特異的に変化するmiRNAを同定できたことも当初の予定通りである。 IgA腎症モデルマウス腎臓と血漿の両方で有意変化するmiRNAが同定できなかったことは予期していないことであったが、最終的にIgA腎症バイオマーカーmiRNAのヒトへの応用を考えた際には、血液で有意に変化するmiRNAに焦点を当てたほうが、将来性があると考えられるため、IgA腎症モデルマウス血漿で特異的に変化するmiRNAをIgA腎症バイオマーカーmiRNA候補として、腎生検で病理診断のついているIgA腎症患者を含む、各種腎疾患のヒト血漿で候補miRNAの発現変化を比較検討し、IgA腎症バイオマーカーmiRNAを確立する予定であったが、COVID-19蔓延禍のため、qRT-PCR試薬が入手できず、ヒトでの解析が未着手であるため進捗状況としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度で選出したIgA腎症モデルマウスの血漿で特異的に変化するmiRNAを、IgA腎症のバイオマーカー候補として、IgA腎症患者を含む、各種腎疾患のヒト血漿での発現変化を比較検討し、IgA腎症バイオマーカーmiRNAを確立する。次にIgA腎症バイオマーカーmiRNAのHIGAマウス血漿での発現の経時的変化を明らかにする。次に、IgA腎症バイオマーカーmiRNAとなるmiRNA-mimic/inhibitorを作成し、HIGAマウスのmiRNAの経時的発現変化解析から変化を認め始める週齢から25週まで、5nmolのmiRNA-inhibitorまたはmimicを週2回尾静脈より経静脈的投与する。未処置HIGAマウス、control miRNAを投与したHIGAマウスをコントロール群とする。25週齢でマウスを解剖し、各群の腎臓で標的miRNAのノックダウン(inhibitor投与時)または過剰発現(mimic投与時)効率をqRT-PCR法で比較検討する。またmiRNA-inhibitor/mimicのIgA腎症進展抑制効果を腎組織、qRT-PCR、ウエスタンブロット法による腎障害マーカー測定により評価する。さらに各群の腎臓で遺伝子マイクロアレイを実施し、同定したmiRNAの生体内での機序を網羅的解析する。本方法でmiRNAのIgA腎症調節と治療薬としての生体内での機序を解明できる。
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