研究課題/領域番号 |
21K08235
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
上野 仁之 杏林大学, 医学部, 講師 (30586251)
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研究分担者 |
長瀬 美樹 杏林大学, 医学部, 教授 (60302733)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | podcyte / myosin / Myo10 / foot process |
研究実績の概要 |
今回、Myo10に注目し、研究を進めた。Myo10は糸状仮足(Filopodia)や神経軸索の伸長に関わっていることが知られており、腎糸球体上皮細胞(podocyte)の伸長と維持にも関わることが予想された。前年の結果よりMyo10はPodocyteに発現していることが分かっていたが、いつどのように機能しているかは不明だった。 Myo10の腎糸球体上皮細胞(podocyte)での機能を調べるためにSDラットの腎臓の形成過程における発現変化、損傷による発現変化を観察した。Podocyteの形成初期にはMyo10の発現はあまり見られなかったが、Podocyteの成熟過程においてその発現量が上昇することが分かった。また、成熟後も発現量を維持していることから足突起の維持にも働いていることが予想された。puromycin aminonucleoside (PAN)を用いたPodocyteの障害実験により、足突起が消失する損傷時にMyo10は発現している事がわかり、足突起の再生に寄与しているのでは無いかという事が分かった。 さらにラットのPodocyte細胞株であるC7の分化過程において突起の伸長端だけで無く分岐部にもMyo10が集積していることが分かった。このことによりmyo10は畝隆起から足突起を分岐させることに寄与すると考えられる。 さらにMyo10を過剰に発現したところ、樹状様の突起を伸ばすことが分かった。また、PH domainを欠損したMyo10も過剰発現したが特に突起の伸長に影響は無いようであった。 これらのことからMyo10は一次突起の形成後の足突起の形成と維持に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の研究により、今までほとんど分かっていなかった足突起の伸長と維持に関係するモータータンパク質が同定出来た。まだどのような機構によってその制御が成されているか分からないが、Podocyteの複雑な形態形成機構の解明に大きく寄与する事が考えられる。 また過剰発現により形態形成のタイミングが重要なことがわかり、1次突起の形成が先に行われ、それに続き足突起の伸長が行われるのでは無いかということが分かった。また足突起消失からの回復に関係しているのでは無いかと考えられ、腎硬化症の予防に役立つ知見である。
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今後の研究の推進方策 |
細胞株への過剰発現では実験の性質上、分化のスタート時点が遺伝子導入効率が良く、分化後では導入が困難になる。いままでの実験より分化直後の過剰発現では1次突起の伸長をする前に樹状様の突起が形成することが分かっている。そのため、今回はTet-on systemを用いて遺伝子の発現を制御し、十分に分化した後に過剰発現をさせて形態変化を観察する。 これにより一次突起から足突起の形成が見られることが期待出来る。 またMyo10にはPH domain以外にもいくつかdomainが存在する。それらのdomainも欠損させどのdomainが重要かを決定する。 また、Live cell imageing でその動きを観る。それにより分岐部に集積したMyo10がどのような挙動を示すか観察出来る。畝隆起から足突起の伸長機構はまだほとんど分かっておらず、重要な知見になる。 その他の注目したモータータンパク質(Myo1b、Myo5C、Kif23、Kif24)に関しても細胞培養用のプラスミドの用意は出来ているので培養細胞の観察などを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
一昨年度のコロナ感染による繰り越しが大きかったために今年も少し次年度使用額が生じた。 今年はトランスフェクション試薬や当初予定していなかったdomain欠損のコンストラクトの作成をするため、当初予定していた金額より多く必要になる。
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