慢性腎臓病(CKD)は新たな国民病で、放置すると透析や心血管病死に至り、患者のQOLや生命予後に大きく影響するが、いまだ特効薬がなく、病態に根ざした治療法の開発が喫緊の課題である。腎糸球体足細胞(ポドサイト)の障害は蛋白尿や糸球体硬化症を引き起こし、その形態機能制御はCKD治療の観点から重要である。本研究では、細胞骨格上を滑走する分子モーターに注目し、実験動物、細胞レベルで解析を実施し、形態形成のメカニズムの解析を行った。まずKif23、Kif24、Myo1B、Myo5C、Myo10の10週のマウスの腎臓での発現を確認した。どのモーターもポドサイトに多く発現していることが分かった。特にMyo10はポドサイトに多く発現が確認され、フィロポディアの伸長などに重要な働きをしているため、今回はMyo10を中心に解析を行った。Myo10の発現量はラットの腎臓のポドサイトでは足突起の形成がほとんどされない生後7日まではほとんど発現しておらず、足突起の形成が行われている生後4週目やポドサイトが成熟している8週目では多く発現していた。またpuromycin aminonucleosidaseの投与後7日目のラットのポドサイトでも発現量は保たれていた。これらよりMyo10はポドサイトの形態形成や維持に働いていることが示唆された。また細胞株の分化/突起の伸長促進実験では突起の伸長に応じてMyo10の発現が増える事が分かり、ポドサイトの細胞株で細胞内局在を確認したところ細胞体と突起の先端及び突起の分岐部に多く局在している事が分かった。さらに細胞株でMyo10をover expressionをしたところ、樹状様の突起が多く形成されることが分かった。これらのことによりポドサイトはMyo10の発現量調節によって形態形成の制御を行っている事が示唆された。
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