研究課題/領域番号 |
21K08247
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
高木 陽子 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (70813517)
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研究分担者 |
小林 靖子 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (60451720)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 微小変化型ネフローゼ症候群 / ノンコーディングRNA / nc886 / ポドサイト |
研究実績の概要 |
健常ヒトポドサイト細胞株におけるnc886遺伝子領域のDNAメチル化率を、バイサルファイトパイロシークエンス法を用いて解析した。nc886領域の9ヶ所のCpG部位で、20継代以内の細胞株ではメチル化率は比較的高く、増殖期と分化後でメチル化率に大きな変化はなかった。次に、Rt-PCR法を用いて健常ヒトポドサイト細胞株におけるnc886の発現解析を行った。nc886はウイルス感染におけるPKR活性を調整することから、感染モデルとしてPoly(I:C)とLPSで、ネフローゼ(NS)モデルとして患者再発時と寛解時の血清で刺激し、解析した。感染モデルでは刺激時間によるnc886の発現変化を時系列でみたところ、1時間刺激で最も低下し、3-6時間刺激で回復する傾向にあることが分かった。そこでNSモデルでは1時間刺激後の発現解析を行った。nc886の発現は再発血清による刺激と比較して寛解血清刺激で有意に高く、健常群では高い傾向にあった。これは、患者再発時、寛解時にそれぞれ採取した末梢血単核球でのnc886の発現と同様の傾向を示している。Nc886の定常的な発現は健常または正常の状態で高いことが知られており、感染刺激時や再発時血清刺激で、ポドサイト細胞株に何らかのストレスが生じていることを示唆する。 そこで、ポドサイト細胞株におけるnc886の発現変化が蛋白尿発現にどのように関与しているか検討するために、蛋白尿発現時に特有とされるポドサイトの形態的、機能的変化の検討に着手した。Lifeactを導入してF-アクチンを可視化したポドサイト細胞株を作成し、感染モデルにおいてアクチンストレスファイバーの変化を検討したところ、Poly(I:C)刺激1時間後に、アクチンストレスファイバーが有意に消失していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常ヒトポドサイト細胞株におけるnc886遺伝子領域のDNAメチル化率とnc886の刺激発現解析が終了し、感染モデル、NSモデル、nc886ノックダウンポドサイトにおける、蛋白尿発現時のポドサイトの形態的、機能的変化についての解析に着手することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、siRNAを用いてnc886ノックダウンポドサイト株を作成し、アクチンストレスファイバーの形態変化について検討する。また、細胞骨格を制御する細胞内情報伝達経路にあるVASP(vasodilator-stimulated phosphoprotein)リン酸化や、Rho GTPaseの活性変化について検討する。さらに遊走能の変化についても検討し、ポドサイト機能異常に対するnc886の意義を明らかにしたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID19パンデミックによる流行状況に伴う行動制限により、実験を停止せざるを得ない時期があったため。また、実験の系の確立のしやすさから、次年度に行う予定だった実験を先に開始したために、予定額との差額が生じた。今年度は、昨年度行う予定だった実験も開始していく。
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