本研究では、IgA腎症患者の口蓋扁桃の粘膜免疫異常の詳細な機序を解明することを目的とする。現在までの研究で、IgA腎症患者の扁桃組織では、習慣性扁桃炎患者の扁桃組織と比較して内在する細菌叢に明らかな違いは認められないものの、細菌叢に対するIgA免疫反応が亢進していることが観察された。本研究では摘出扁桃を用いて網羅的遺伝子発現解析(RNA-Seq)を行い、IgA腎症における免疫反応の詳細を明らかにすることを計画した。扁桃組織全体を用いたバルクRNA-Seqでは、習慣性扁桃炎患者に比較してIgA腎症患者では上皮系遺伝子発現の亢進が観察された。さらに凍結扁桃組織から1細胞核に処理した検体のRNA-Seqではやはり上皮系クラスターにおいて、IgA腎症患者で有意に発現上昇する遺伝子群が多く認められた。1細胞核RNA-Seqのデータを用いて、リガンド・受容体・標的遺伝子の発現変化を考慮した細胞間相互作用の解析を行った。その結果、上皮系遺伝子群と免疫細胞・樹状細胞などの相互作用が検出された。現在、扁桃組織の免疫細胞にフォーカスするために新鮮扁桃組織から1細胞処理した検体でRNA-Seqを行いIgA腎症の病態の背景に存在する免疫異常について解析を進めている。
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